ITやエレクトロニクス技術は、医療サービスの質をどのように変えるのか。大学病院という場でその実証を進めているのが、岐阜大学医学部附属病院(岐阜県岐阜市)である。

 同病院は2004年に現在の場所に移転した際、最新鋭のITシステムを導入した。以後、ITを活用したサービス改善に努めている。同病院の医療情報を担当し、日本における医療情報学の第一人者でもある紀ノ定保臣氏(岐阜大学大学院 教授 医学系研究科 医療管理学講座 医療情報学分野)にその取り組みを聞いた。

(聞き手は大下 淳一=日経デジタルヘルス)

――岐阜大学病院では、どのような経緯でITの活用に乗り出したのでしょうか。

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岐阜大学大学院 教授の紀ノ定保臣氏

 2004年の移転時、我々は10年先、20年先の病院がどうあるべきかを議論し、“インテリジェント・ホスピタル”を目指そうという方針を打ち出しました。そしてそれに見合うITシステムを導入しようと考えました。着目したのは、さまざまな情報の数値化です。単に経営にかかわる情報を数値化するだけでなく、院内にあるさまざまな医療情報をデジタルデータ化しようと考えました。いったんデジタルデータに変えてしまえば、インターネット技術などを活用していかようにも処理できますし、処理コストも安くできます。“ペーパーレス”や“フィルムレス”にもつながる。そのためのツールとしてデータウェアハウス(data warehouse:DWH)を導入しました。

 これまでも医療情報を電子化する動きはあったわけですが、診療科ごとに閉じた形での業務改善を目的とする場合が大半でした。これに対し我々は、病院全体が協調した形で効率化しなければ意味がないと考えました。電子カルテ一つを取っても、従来は病院全体のパフォーマンスを考慮したシステムは存在しなかった。こういう課題をぜひ解決したいと考えたわけです。

 病院全体で医療データを共有し活用するために、我々はデータを中央のサーバーで一元管理するシステムを構築しました。各診療科で別個に管理しているデータを寄せ集めるのではなく、オリジナルのデータを一括して中央で管理する。そしてこのデータを院内のどこでもリアルタイムで閲覧し利用できるようにしています。