自動運転・運転支援
 

知的財産の紛争に活用するため自社開発と早期登録に注力

川瀬 健人=ネオテクノロジー
2014/06/12 00:00
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 続いて、Google社の特許をめぐる全般的な状況を考察してみましょう。

 自動車関連に限らずGoogle社名義の特許は大半が米国の特許であり、2014年5月1日時点の検索結果では1万6000件あまりの米国公開・登録特許を保有しています。欧州や日本への出願は少なく、ヨーロッパへの出願は2000件あまり、日本への出願は600件あまりしかありません※2。中国への出願も1000件ほどでした。

※2 2014年4月30日までの全期間を対象に検索。日本の特許については日本パテントデータサービスのJP-NETを用いた

 Google社は1998年の設立以来、100社以上を企業買収して現在に至っています※3。企業買収しても子会社が存続するときは、特許が移転登録されているとは限りません。このため、Google社のように買収を繰り返してきた企業の特許ポートフォリオの全体像は、把握することが困難です。

※3 英文Wikipediaを参照

 例えば、Google社は2011年に130億米ドルをかけて米Motorola Mobility社を買収しました。Motorola Mobility社は2万5000件あまりの米国特許を保有していますが、これらは2014年6月2日現在、移転登記されていません※4

※4 Google社は、Motorola Mobility社を中国Lenovoグループへ売却すること、その際にMotorola Mobility社の特許をGoogle社に残すことを2014年1月に発表した。近いうちにMotorola Mobility社の特許はGoogle社へ移転登記されるものと思われる

Motorolaの特許は紛争解決に使えなかった可能性も

 このように、Google社の特許は全体像がつかみにくいのですが、大きく2つの特徴が見てとれます。

 第1に、Google社が自社名義として保有している1万6000件の公開・登録特許のうち、半数近くにあたる約7000件を他社から譲渡を受けたものが占めていることです。件数の多い順に譲渡企業を列記すると、米IBM社(3500件)、日立製作所(400件)、オーストラリアSilverbrook Research(350件)、米Xerox社(130件)、台湾・鴻海精密工業(100件)となります。ビジネスの拡大につれてハードウエアにも視野に拡げるようになり、結果として製造業者の保有していた特許を重視するようになったのでしょう。

 第2は、ここ数年でGoogle社自身による米国特許出願が急増していることです。米国公報の発行数をベースにここ数年の登録特許をカウントすると、373件(2009年)、484件(2010年)、608件(2011年)、1234件(2012年)、1902件(2013年)と急激に増加しています。2014年は4月30日までで、すでに739件の米国特許が成立しています。

 出願急増の背景には、様々な要因が考えられますが、やはり、スマホビジネスをめぐる知的財産の紛争と関係があるようです。

 Google社は、モバイルOS「Android」を搭載したスマホビジネスを展開するにあたり、2011年前後から特許訴訟に巻き込まれました。Motorola Mobility社の買収も、米Apple社から訴えられた台湾HTC社を、Motorola Mobility社の特許を使って援護することを目的にしていたと言われています。

 しかし結果から言えば、HTC社はApple社との裁判に勝てませんでした。その後も、Android搭載スマホをめぐる訴訟は頻発しており、Apple社を交渉のテーブルにつけることに失敗しています。Motorola Mobility社の特許は、いわゆる「FRAND」宣言※5が付された標準必須特許であったため、裁判ではわずかなライセンス料の請求しか認められなかったようです※6

※5 FRANDは「Fair, Reasonable And Non-Discriminatory」の略。業界標準規格を設定する場合、特許を有する業者が集まり、一定の使用条件を定めて標準規格を策定することが多い。その際、特許を保有する企業は「公平で、合理的、かつ非差別的」に権利行使をする旨を宣言することで標準規格の普及を促進する方針を採ることがある。Motolora Mobility社は保有するモバイル関連の特許について、FRAND宣言を行っていた
※6 ロイター通信の2013年4月27日などを参照。このほか米国で米Microsoft社に損害賠償を請求したが実質敗訴。欧州ではFRAND宣言を付した特許権の行使が独占禁止法にあたると評価されたと言われている。多くの特許紛争がそうであるように最終的に和解で決着しているため、どれだけの金額が動いたのか正確な捕捉は困難

 このため、特許を知的財産の紛争に活用するためには、企業買収で特許を取得するのではなく、Google社自身が技術開発したものを出願して、権利化を行う必要があると判断したようです※7。実際、前回紹介した自動車関連で中核的な20件の特許は、すべてGoogle社自身が出願したものです。

※7 その一方で、企業買収による特許ポートフォリオの取得は、韓国Samsung Electronics社のAndroid搭載スマホの市場拡大に寄与した可能性もあるとして、肯定的に評価する報道もある

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