東北地方沿岸部に甚大な津波の被害をもたらした東日本大震災から約3年が過ぎた。被災地では今、地域医療の復興と、大規模なデータ収集に基づく個別化医療の実現を目指すプロジェクトが動き始めている。東北大学が主導する「東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo:Tohoku Medical Megabank Organization)」である。医療情報と遺伝情報を集積したバイオバンクの構築をうたう同プロジェクトの詳細を、東北メディカル・メガバンク機構 機構長を務める山本雅之氏(東北大学大学院医学系研究科教授)に聞いた。

(聞き手は大下 淳一=日経デジタルヘルス)

――今回のプロジェクトを始動した経緯を教えてください。

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東北メディカル・メガバンク機構の山本氏

 震災で失ったものを“復元”するだけでは真の復興にはつながらない。そう考えて、被災地の創造的復興につながるプロジェクトとして構想したのが、東北メディカル・メガバンク機構です。

 東北地方の地域医療はこの度の震災で大きな打撃を受けました。地域の中核を担う大規模病院が津波で流されてしまった事例もあります。地域医療を立て直すとともに、震災から立ち上がろうとしている地域住民の健康をどのように長期的に見守っていくか。こうした観点から、大規模な地域住民コホートを柱とする今回のプロジェクトを立ち上げたわけです。被災地に新たな産業を興こし、雇用を生む取り組みとしてもふさわしいと考えました。

 このプロジェクトでは、医療情報と遺伝情報を組み合わせた「バイオバンク」の構築を目指します。個別化医療の実現などに向けた、社会の共通インフラになるものと言えるでしょう。各地に設けた「地域支援センター」を核に、血液検査やMRI検査による医療情報の収集と、遺伝情報の収集を並行して進めていきます。