複数の新電力がグループになり、需給バランス

 とはいえ、中之条電力だけで、安定的に電力を供給することは難しい。夜間や雨天の日、メガソーラーは発電しない。また、町内公共施設の電力需要を超えて発電した電力は余ってしまう。新電力は、一般電気事業者(群馬県では東京電力)に託送料金を払って送配電線を借り、顧客に電気を送る。その際、電気の供給と需要を30分単位で同量にし、需給バランスを維持する必要があり、一定程度、それを逸脱すると一般電気事業者にペナルティ(インバランス料金)を払わなければならない。これを「30分同時同量」ルールと言い、新電力にとって、その需給バランスの調整が大きな負担になっている。

 実は、中之条電力は、「同時同量」を新電力大手であるF-Power(東京都港区)に委託することで達成している。F-Powerは、中之条電力を含め、複数の新電力をグループ化して、全体で「同時同量」になるように需給調整する。これを「代表契約者制度(バランシンググループ)」という。複数の新電力が、一般電気事業者と一つの託送供給契約を結び、新電力間で代表契約者を選ぶ仕組みだ。中之条電力は、F-Powerを代表者とするバランシンググループの一員になることで、同時同量の一端を担いつつ、安定供給を実現した。

 中之条町にこうした地産地消スキームの構築を働きかけたのが、電子部品商社のバイテックだった。同社は、多角化の一環として、環境エネルギー事業に乗り出し、太陽光パネルなど環境関連商材の販売のほか、2013年にはメガソーラーの建設・売電事業や、新電力であるV-Powerを設立した。中之条町の3つのメガソーラーのうち、「バイテック中之条太陽光発電所」(出力1MW)は、バイテックが町から遊休地を賃借し発電事業の主体となった(図3)。ほかの2つ、「沢渡温泉第1太陽光発電所」「沢渡温泉第2太陽光発電所」(それぞれ出力2MW)は、町が土地を確保して、事業主体となっているが、バイテックが企画・管理から保守を担っている(図4)。

図3●バイテックが事業主体となるメガソーラー「バイテック中之条太陽光発電所」(出所:日経BP)
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図4●中之条町が事業主体となる「沢渡温泉第2太陽光発電所」(出所:日経BP)
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