プレーナ型NANDフラッシュ・メモリの後継技術として期待を集めているのが、3次元構造のNANDフラッシュ・メモリ(以下、3次元NAND)だ。メモリ・セルを3次元方向に積層することで大容量化する技術である。

 3次元NANDの開発は以前から進められていたが、コストを下げにくいという問題があった。それを克服する技術として2007年に東芝が開発したのが、「BiCS(Bit Cost Scalable)」である(図5)。

図5 低コストの3次元NANDの提案が相次ぐ
低コストで製造できる3次元NAND「BiCS」を東芝が2007年に発表した後、同様の手法に基づく3次元NANDの提案が各社から相次いでいる。
[画像のクリックで拡大表示]

 BiCSは縦型のチャネルを備え、電荷蓄積部にSONOS(silicon-oxide-nitride-oxide-silicon)構造を採用する。BiCSの技術的なポイントは、その製造手法にある。BiCSでは制御ゲートを何層も積層した後、その上層から下層までを貫く穴(スルー・ホール)を開けてチャネルを作る。1層ずつ下から積み上げる従来の3次元NANDに比べて、製造工程数を大幅に減らせる。結果として、プロセス・コストを劇的に低減できる可能性がある。

 BiCSのコンセプトが低コスト化に有効だったため、その後、韓国Samsung Electronics社や我々など多くの企業が3次元NANDの開発に取り組むようになった。垂直ゲート型などさまざまな方式が提案されたが、ここにきて主要メーカーの選択は垂直チャネル型に統一されつつある(図6)。東芝の「P-BiCS」やSamsung社の「TCAT(Terabit Cell Array Transistor)」、我々の「DC-SF(Dual CG-Surrounding FG)」や「SMArT(Stacked Memory Array Transistor)」がこれに当たる。我々は浮遊ゲート型のDC-SFセルとチャージ・トラップ型のSMArTセルの両方を開発した。以下では、この二つの3次元メモリ・セル技術を紹介しよう。

図6 さまざまな方式が登場
3次元NANDはさまざまな方式が提案されているが、主要メーカーの選択は垂直チャネル型に統一されつつある。(図:各社の資料を基に作成)
[画像のクリックで拡大表示]