前回から続く

6角形電極のTFTを採用

 富士フイルムは、X線検出感度を従来比で約2割向上させたマンモグラフィ「AMULET Innovality」を展示した(図4(a))。新構造のTFTを用いた直接変換型FPD(flat panel detector)を搭載することで実現した。富士フイルムメディカルを通じて2013年5月15日に発売する予定である。

(a)富士フイルムのマンモグラフィ
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(b)コニカミノルタのデジタルX線撮影装置
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図4 FPD活用の医療機器が進化
富士フイルムは、6角形電極のTFTを採用したFPDを搭載するマンモグラフィを展示(a)。コニカミノルタは、ワイヤレス型として「世界最軽量」をうたうデジタルX線撮影装置(DR)を展示した(b)。

 「HCP」(hexagonal close pattern)と呼ぶ構造のTFTパネルを採用した。電荷を収集する電極の形状を6角形にしたTFTパネルである。直接変換型FPDは、X線を電荷に変換し、電荷をTFTパネルの電極で収集することでX線情報を検出する。通常のTFTパネルは電荷を収集する電極の形状が正方形であり、電極の角の部分で電界強度が乱れ、電荷の収集効率が下がっていたという。

 電界強度の乱れは、一般的に角が鋭角になるほど大きくなる。このため、6角形であり電極の角が鈍角である今回のTFTパネルでは、電界強度の乱れが緩和され、電荷収集効率が向上すると説明する。X線検出感度が高まり、従来の製品より低い線量で撮影できる利点が生まれる。

 この製品は、富士フイルムが新たに開発した乳房の圧迫板「FS圧迫板」にも対応する。マンモグラフィ検査時には、乳房を圧迫して固定するため、患者の痛みや不快感があるのが実態だ。従来の圧迫板では、乳房の最も厚みがある部分に集中して圧力が加わっていたため、その部分に強い痛みを感じることが多くあったという。

 そこで、今回の圧迫板は、乳房と接触した際に圧迫板が乳房の厚みに沿って傾斜すると同時に、圧迫板の前面部と両側面部(左右)の計3カ所にスリットを設けることで、乳房を圧迫する際の圧力が面内で分散される設計にした。同社が女性10人を対象に実施した評価では、10人中7人から「痛みが軽減し、次回も『FS圧迫板』で検査したい」という結果が得られたとする。