2013年4月12〜14日にパシフィコ横浜で開催された「2013 国際医用画像総合展(ITEM 2013)」。最新の医療画像機器や周辺機器が一堂に会し、約2万2000人の来場者が詰め掛けた。この展示会から透けて見えたのは、医療機器開発の新たな方向性だ。その内容を、<上><下>の2回に分けて紹介していく。


 ITEM 2013で目立っていた動きは、大きく二つある。(1)他の分野に向けて開発した製品や技術を医療向けに提案、(2)自律走行技術や新構造のセンサなどの新技術を利用して医療現場のニーズに応える、である。

放送向け機器を活用

 (1)の他分野向けの製品や技術を医療にも提案しようとする動きを見せたのは、現時点で医療分野以外に主力事業を持つソニーやパナソニックなどの企業である。

 例えばソニーは、放送業務用に開発した機器を活用し、手術室で4K映像(3840×2160画素)をリアルタイムに撮影・表示するためのシステムを展示した(図1)。手術中の映像を撮影する、いわゆる術野カメラを想定したシステムである。

(a)展示したカメラとディスプレイ
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(b)オリンパスとの合弁会社設立会見の様子図
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図1 4K技術の活用を模索するソニー
ソニーは、手術室で4K映像をリアルタイムに撮影・表示するためのシステムを展示した(a)。同社とオリンパスが2013年4月16日に設立した合弁会社、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズにおいても、こうした4K技術の活用を進めていく(b)。

 術野カメラとしては現在、いわゆる「フルHD」クラスのカメラの導入が進んできているが、「ある部分を拡大して見たいという場合に、どうしても解像度が足らずに映像がボヤケてしまう」(ソニーの説明員)といった課題がある。一方、4Kカメラを手術室に導入している病院も幾つか存在するものの、「リアルタイムに映像を確認できない」(同氏)という現場からの不満があった。

  そこで、放送業務用に2013年2月に発売したばかりの4Kカメラ「PMW-F55」を利用するシステムを提案した。このカメラは、「搭載するプロセサの能力向上」(ソニーの説明員)などによって、装備された4本のBNC端子から4K映像をリアルタイムに出力することができる。その映像信号を、同じく放送業務用に開発した30型の4K液晶モニター「PVM-X300」と組み合わせることで、4K映像のリアルタイム表示を実現した。既に放送業務用に販売している製品で構成したシステムであるため、病院などからの要望があれば、すぐに納入が可能であるという。

  ソニーは2013年4月16日、医療事業に関するオリンパスとの合弁会社、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズの設立を発表したばかり(図1(b))。この新会社においても、今回の展示品のような4Kや3Dといった映像技術を生かした外科用内視鏡や、手術室向けの映像システムを開発していく考えだ。同社 代表取締役 社長の勝本徹氏は、「ソニーが放送機器向けなどで培ってきた技術を生かして、手術室をイメージング・スタジオ化したい」と語る。