自立型のパワコンを導入し、災害時に地域に給電

 パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図5)。複数台のPCSのうち、1台を自立運転機能付きの機種を採用することで、停電時にも最大50kWを給電できるようにした。通常のPCSは電力系統網が停電すると、自動的にそれを感知して運転を停止し、停電中は稼働しない。これに対し、自立運転機能付きのPCSは、手動で自立運転制御回路に切り替えることで、電力負荷に応じて太陽光パネルの発電電力を交流に変換し、給電できるようになる。

図5●パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
(出所:日経BP)
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 こうした自立運転機能付きのメガソーラーでは、PCSの近くに自立運転時の電源コンセントを装備し、停電時にメガソーラーの敷地内に可搬型の蓄電池を持ち込んで充電するという方式が多い。だが、工場敷地内にある仙台製油所メガソーラーでこうした仕組みを採用すると地域住民が簡単に利用できない。そこで、自立運転時のコンセントを工場敷地外の電柱まで伸ばして設置し、電力網が停電時に地域住民が工場敷地内に入らずに非常用電源として利用できるようにした。JX日鉱日石エネルギーは、自立運転システムの採用と並行し、周辺自治体に蓄電池を寄付した。

 事務所棟に導入した「新エネルギーシステム」は、パナソニック製の多結晶シリコン型太陽光パネル(15kW)、パナソニック製の双方向インバーター内蔵型Liイオン電池(30kWh)システム、ヤンマーエネルギーシステム製の非常用エンジン発電機(104kW)、SOFC(固体酸化物)型燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システム「エネファーム」(0.7kW)などが連携しつつ、事務所棟に電気と熱を供給する。エンジン発電機の燃料は軽油で、490ℓのタンクを備える。燃料電池コージェネの燃料はLPG(液化石油ガス)だ。

 通常は、製油所内の電源系統と新エネルギーシステムが連携する。所内電源系統から電力供給を受けつつ、太陽光発電の電力で蓄電池をフル充電した上で、電源系統に供給する。燃料電池コージェネは、当直室の給湯需要をまかない、その際に発電した電力を所内電源系統に供給する(図6)。この場合、製油所内の電源系統と連携することで、事務所棟内のすべての負荷をまかなえる。

図6●SOFC(固体酸化物)型燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システム「エネファーム」(0.7kW)
(出所:日経BP)
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