部品検査では3DAモデルの情報に基づいて、完成した樹脂部品の現物を接触式、非接触式の測定機で計測し、設計通りになっているかどうかを検査する。2D図面と3Dモデルを使った従来の方法に比べて、どの作業がどの程度改善されたかを明確にすることを目的とした。

公差範囲内かを色分け表示

 実証プロジェクトでは、タッチプローブを使う門型の接触式測定機と、ブローブ部をレーザー方式のものに置き換えた非接触式測定機(門型)、レーザー方式のプローブを多関節アームの先端に取り付けた非接触式測定機(アーム型)の3種類を使い、それぞれの工数を比較した。

 特に、今後の普及拡大が見込まれている非接触式測定機では部品の表面全体を点群データとして測定するため、3Dデータと比較して全体的な誤差を表しやすい(図1)。例えば、指定した普通幾何公差の範囲内に入っているかどうかをカラーマップで表示できる。もちろん、この作業でも課題はあったが、それは後述しよう。

図1●検査結果のカラーマップ表示
非接触式の3Dスキャナーを使って測定したデータと、3DAモデルのデータを比較した。部品内の各部で異なる3段階の普通幾何公差に対して、公差内かどうかを示している。
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 まず、各測定方式において3DAモデルを利用することによる効果をみてみる(図2)。検査工程には大きく、「測定箇所の確認や方式の検討」「実際の測定作業」「測定結果の評価」の3つの作業がある。これら3つを全体でみると、作業時間を約20~50%短縮できた。

図2●部品検査工程の効果
接触式の測定器、非接触式の測定器(門型とアーム型)の3機種それぞれについて、3Dモデルと2D図面を併用した場合と3DAモデルを使った場合の工数を比較した。
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 特に削減効果が大きかったのは、アーム型の非接触式測定機を使った場合で、39~48%の工数を削減できた。測定作業自体を6割、評価作業も3割以上短縮できた。

 これは、従来の3Dモデルと2D図面を併用した場合に比べて、[1]幾何公差をファイルから自動で取り込めるために入力作業が無くなる、[2]対象点群の自動抽出機能によって、手動によるフィーチャーへの割り当て作業が無くなる、[3]普通幾何公差を導入し、非接触測定によって面による評価が可能になったため測定・評価ポイントを削減できる、といった理由がある。[1]に関しては接触式測定でも共通して言える。

 各作業でみると、測定箇所の確認や方式検討に関しては従来とほとんど差がない。削減時間としては、もともと作業時間が長かった測定作業での削減効果が大きかった。