直後の工具をさわれる加工

 このようにして高速に切削できると切りくずに熱が移行して、加工直後でも工具とワークを手でさわれる程度の温度にできる。現状ではTi合金やステンレス鋼の切削において、加工直後の工具が非常に熱くて手でさわれないような事例をよく見かけるが、工具寿命の点でも、切削面品質の点でも好ましいとは言えない。今後高品位な切削面のニーズが増えると考えられることからも、このような加工は避けるべきであろう。

 切削中の刃先を強制的に冷やすアプローチもある。大量の加工液を供給して刃先の温度を下げる方法で、工具の摩耗を防げると同時に、ワークへの熱影響も減らせる。例えば、牧野フライス製作所のマシニングセンタ(MC)「T2」は、1分間に200Lの加工液を供給できる。

 さらに冷却を追求した例として、欧米の工作機械グループMAGが手掛ける「超低温切削」が挙げられる。-40℃程度の窒素ガスを、工具を通して刃先付近に供給するものである。

 このように難削材に取り組むには工具、切削条件、CAM、機械とさまざまな要因で総合的に対策を講じる必要がある。

(第3回に続く)