2枚刃よりも3枚刃

 工具の摩耗は、やや荒っぽい対応方法ながら、エンドミルを多刃にすることでも遅らせられる。1刃について摩耗するまでにワークをこする回数が同じであるとすれば、刃数の分だけ多く切削できることになる。市販のエンドミルはほとんどが2枚刃だが、3枚刃のものもあるので、これを使うことが望ましい。米Boeing社もTi合金には多刃のエンドミルを使うことにしているようだ(図1)。

図1●米Boeing社がTi合金の加工に使う多刃の工具
図1●米Boeing社がTi合金の加工に使う多刃の工具
刃が多い工具は、少ない工具に比べると、刃が摩耗を“分担”できるため、寿命が延びる。
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 ただし、複数の刃の位置が高い精度でそろっている必要がある。どれか1つの刃が飛び出しているようだとその刃があっという間に摩耗してしまい、良好な加工ができなくなるためだ。

 CAMでのカッタパスの出し方も重要である。例えばポケット加工のような場合、現在のほとんどのCAMは中心から繰り広げる形のパスを生成する。しかし本来はなるべく直線状にジグザグで切削するパスの方が望ましい。なるべく直線区間の長いパスの方が、送りの指令値通りに機械が動く区間が長くなるからだ(図2)。

図2●難削材に適したカッタパス
図2●難削材に適したカッタパス
現在の多くのCAMは(a)のような繰り広げのパスを生成するが、(b)のような直線区間の長いパスの方が高速切削に向く。
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 工作機械はカーブや角があるところはゆっくり動かざるを得ず、直線区間に入ってから加速して指令値に到達し、角部や方向転換部の手前で減速する。従って、直線区間が短いと十分に加速できず、指令値よりも遅い速度しか出ない。すなわち、短い距離なのにワークを多くの回数こすることになり、工具寿命が短くなってしまう。

 工作機械自体は俊敏性、すなわち加速減速が良好である必要がある。この点では、リニアモータ駆動の機械の方が有利だ。