韓国Samsung Electronics社の躍進を、1990年代後半から2000年代前半にかけて、同社常務として内部から見ていた筆者がその要因を明らかにすると同時に、それをケーススタディとして日本のものづくりがどうあるべきかを考察します。
東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター
韓国Samsung Electronics社の躍進を、1990年代後半から2000年代前半にかけて、同社常務として内部から見ていた筆者がその要因を明らかにすると同時に、それをケーススタディとして日本のものづくりがどうあるべきかを考察します。
どこまでも自分流にこだわった日本(第6回)
最近、筆者は国内で製造業関係のコンサルティング会社が開催したイベントに出席した。そこでさまざまな日本メーカーの発表を聞いて、びっくりしてしまった。現地の作業員の反発をいかに抑えたかとか、日本の5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)を教え込むのに大変な苦労があったとか、要するにいかに現地の人を日本流の…
ニーズが変われば、造るプロセスも変わるはず(第5回)
Samsung Electronics社の、多様な要求品質への対応力を示す典型的な例が有機EL(electro-luminescence)ディスプレイだ。Samsung Electronics社や韓国LG Electronics社は有機ELの利用で日本メーカーよりも先行している。有機ELは輝度が高い…
ニーズに応じた「松竹梅」造り分けの重要性(第4回)
韓国Samsung Electronics社は年間3億~4億台ものスマートフォンを生産している。「同じ機種を大量生産し、安く販売してシェアを稼いでいる」などと考える読者も多いかもしれない。しかし、実際には同社は同じものばかりを造っているのではなく、デザインや機能を多種多様に変えて毎月10以上の新モ…
「もの」と「つくり」を分けて考える(第3回)
日本メーカーが得意とする生産技術や生産管理、現場の改善といった能力とは別に、ワクワクするものを考え出す能力が改めて重要であることが分かってくる。というよりも、「ものづくり」はワクワクするものを考える局面と、それを物理的に製作・製造する局面の2つがあって初めて成立するもの、と理解すべきではないか。筆者…
ワクワク感は既存技術で演出できる(第2回)
液晶テレビのバックライトにLEDを採用し、率先して大々的に売り出したのはSamsung Electronics社だ。開発で先駆けたのは日本メーカーだが、価格が高くなるからと引っ込めてしまった。しかし、LEDバックライトの明るさは一度見たら、他のものは見られなくなるほどの魅力がある。Samsung E…
サムスン躍進の理由はコスト競争力ではない(第1回)
韓国Samsung Electronics社は、1997年に韓国がアジア通貨危機により国際通貨基金(IMF)の救済を受けた際に、倒産の危機に瀕していた。そのわずか15年後の2012年には売上高17兆円、営業利益2兆5000億円(利益率14.7%)と非常に大きな変身を遂げた。最近でこそ高い成長がやや…