医療機器分野への新規参入を目指すエレクトロニクス/ものづくり企業が増えている。実際、医療機器は多様な技術の集合体であり、医療機器の進化にはさまざまな技術の後押しが求められている。表1は、現行の医療機器にはどのような技術が使われているのかを示したものである。センサや半導体、信号処理、通信など、実に幅広い技術で構成されていることが分かる。政府も医療機器分野に国内のものづくり技術を活かしていくことを今後の重要戦略に掲げている。

そこで本稿では、医療機器産業の現状について、日本の画像医療システム産業176社の業界団体である日本画像医療システム工業会(JIRA)に整理してもらった。(小谷 卓也=日経デジタルヘルス)


表1 主な医療機器に求められる技術のマップ
(表:JIRAの資料を基に本誌が作成)
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  まず、現状の医療機器産業の規模について簡単に触れたい。医療機器は、医療施設で使われる大型の画像診断装置から家庭用血圧計、そしてメスやハサミに至るまで、その種類は30万~50万種類に及ぶ。

 こうした医療機器全体の世界市場は約20兆円とされる。国内の医療機器市場は約2兆円であり、世界の10%前後を占める(図1)。

図1 2009年における医療機器市場の世界シェア
(図:JIRAの資料を基に本誌が作成)

 国内の医療機器市場は、輸入超過の状態が続いている。医療機器を大きく、治療機器(例えば、カテーテルやペースメーカー)と診断機器(例えば、X線CT装置や超音波診断装置)に分けると、特に治療機器の輸入超過が著しい。国内市場の約70%を輸入に頼っていた時もあるほどだ。

 一方で、日本が比較的、存在感を示しているのがX線CT装置や超音波診断装置、MRIといった「画像医療システム」の分野である。同分野の国内市場は約3500億円(2010年)で、世界市場の約15%を占めるとされる。特に、X線CT装置や超音波診断装置は、輸出高が輸入高を上回っている。長期化する円高基調の中、国内メーカーは健闘している。

 取得特許件数を見ても、画像医療システムの分野に強みを持っていることが分かる。カテーテルなど治療関連の特許件数については米国が圧倒的だが、画像医療システムの特許件数に関しては日本が米国や欧州よりも多いのである。