前回から続く

市場の反応は上々

  (2)の3D化や高精細化した内視鏡で取得した画像を扱う周辺機器の開発については、(1)のような次世代型の内視鏡の今後の普及を見据え、ここにきてにわかに活発になってきた。

 例えば、ソニーは、3D対応の外科用内視鏡と組み合わせて使う3D対応のヘッドマウント・ディスプレイ(3D HMD)を2013年8月に発売した。執刀医が頭に装着し、内視鏡からの映像を目の前で直接見ることができる機器である(図5)。

図5 ソニーが2013年8月に発売した医療用3D HMDは、「ヘッドマウントモニター」と「ヘッドマウントイメージプロセッサユニット」で構成する(a)。医療用に適用させるために、民生用HMDとは異なる設計の工夫を施した(b)。
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  この3D HMDは、内視鏡からの映像信号の入出力や制御などを行う「ヘッドマウントイメージプロセッサユニット」と、頭部に装着する「ヘッドマウントモニター」で構成する。価格はオープンで、市場想定価格は150万円前後。まずは国内で発売し、年間1000台の販売を目指す。

 市場の反応は上々のようだ。ソニーの担当者は「発表後、医療機関から想像以上の問い合わせがある。体が幾つあっても足りないほどだ」「医療現場から『ソニーらしい製品だ』と声を掛けられることが多い」などと語る。

民生用とは違う工夫

 ソニーは、今回の3D HMDの開発に当たっては、既に発売している民生向けの3D HMDをベースに改良を施すなど医療向けに設計を工夫した。具体的には、頭部への装着性を高めて長時間の手術の利用に対応させる、調整用の小窓を設けて仮にずれた場合に術者以外が調整できるようにする、手元が見える構造にすることで器具の受け渡しを容易にする、といった具合である。

 これらの設計の工夫は、東京医科歯科大学との共同研究を踏まえて導入したもの。ソニーは2012年4月に東京医科歯科大学と医療分野における共同研究の加速や人材育成などに向けたプログラムを開始。この取り組みの中で、民生用の3DHMDをどう改良すれば内視鏡手術に適用できるかを検討してきたのだ。

 なお、3D HMDの表示部は、民生用の3D HMDと同様に有機ELパネルを利用する。「動画応答性に優れるため、施術のスピードに追従した映像表示が可能」(ソニー)という。