医療分野では今、多くの技術イノベーションが進んでいる。内視鏡手術の分野も、その一つだ。患者にやさしい手術を手助けするため、さまざまな技術の活用が活発になってきた。医療イノベーションの一端を、内視鏡手術の分野から見ていこう。

 患者への負担が大きい開腹手術に代わり、外科用内視鏡(硬性内視鏡)を用いた内視鏡手術の比率が急速に高まっている(図1)。低侵襲化という大きな医療トレンドを背景に、この傾向は、今後ますます加速するだろう。

図1 外科用内視鏡の市場規模(台数)を示した。2011年の実績に対して、2014年には約2倍の規模になる見込み。
(図:ソニーの資料を基に本誌が作成)

 この動きを支えているのが、技術によるイノベーションだ。特に、「映像技術」がその主役である。体内(患部)に入れたカメラの映像を見ながら手術する内視鏡手術は、そもそも映像技術を利用しなければ実施できないからだ。

 2次元表示や精細度が低い映像を利用すると、奥行き感を把握しにくいという課題が生じる。そこで求められているのが、3次元(3D)表示や、4K(4000×2000画素級)などの高精細表示の技術を活用し、リアリティーの高い可視化を実現することである。「内視鏡手術時に3D映像を利用すれば、縫合時の位置関係などが把握しやすくなるため、手術のスピードが速くなり、患者の負担も軽減できる」(ある医療機器メーカー)。

 このような映像技術の外科用内視鏡分野への活用に関しては、大きく二つの動きがある。(1)内視鏡自体の3D化や高精細化、(2)3D化や高精細化した内視鏡で取得した画像を扱う周辺機器の開発、である。以降では、それぞれの事例を順に見ていこう。

内視鏡手術を模型で再現した様子