2006年に福岡県の山田市と嘉穂郡3町が合併して誕生した嘉麻市。南部に筑紫山地が連なるこの地域はかつて筑豊有数の炭鉱都市として栄えた。「そのころはずいぶんな賑わいで、労働者たちは宵越しのカネは持たないという風でした」。旧山田市出身の初老のタクシー運転手がやや寂しげに話してくれた。夜になるとボタ山(石炭の採掘に伴い発生する捨石の集積場)が赤く燃えるのが見えたという。だが、その面影はいまの嘉麻市にはない。炭鉱閉山は地域経済を根底から揺るがし、山田市の人口はピークの4分の1にまで減った。日本でもっとも急速に過疎化が進んだ地域である。

 そんな旧山田市市街から1kmほど離れた場所に建つ金属加工工場がいま、昼夜を問わないフル稼働状態にある。福岡市に本社を置く金属製品製造の日創プロニティの山田工場(図1、2)。3万5000m2の敷地に5つの工場建屋が並び、5つの建屋を合わせた延べ床面積は1万3250m2に及ぶ。かつて福岡市内にもあった工場を旧山田市出身の石田利幸社長がこの地に集約した。これまでの同社の主力製品は建築用の外板パネルや内装パネルなどで、近年では東日本大震災被災地域の仮設住宅用外壁パネル3000戸分を受注した実績がある。だが、この2年ほどは太陽光パネルを支える架台の生産が大半を占めるようになった。

図1 日創プロニティ山田工場
(出所:日経BP)
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図2 工場敷地で架台部材の出荷準備
(出所:日経BP)
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