太陽光パネルを支持する架台は地味な部材だが、太陽光発電所の寿命や信頼性を左右する。強風や積雪、塩害に耐える強度を維持できなければ思わぬ損失を招くだけではなく、事故にさえ発展しかねない。一方、建設作業の人件費が上昇する中、施工性の改善など建設コストを抑えるキーパーツとして注目されているのも架台だ。まさに太陽光発電所を“支える”存在と言える。ただその市場を見たとき、太陽光パネルやパワーコンディショナーと大きく違うのは、プレーヤーや製品の多様さだ。架台メーカーは何を武器に競っているのか。なぜ、この架台が選択されたのか。「選ばれる理由」に迫る。
拡大市場“支える”架台メーカー 選ばれる理由
目次
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日韓で共同開発、強さとコストを備えた太陽光フロート
バンパーの加工会社が製造、ユニットは強固、接続部は柔軟に
埼玉県深谷市において、農業用ため池の水面を利用した出力1.2MWのメガソーラー「東和アークス深谷水上発電所」の施工が進んでいる。
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ゼネコンが追求した安全性と施工性、三井住友建設の太陽光フロート
水面に柔軟に対応する設計、エンジニアリング力も強みに
三井住友建設は2017年5月、香川県にある農業用ため池の水上を活用した、出力2.6MWのメガソーラー「平木尾池水上太陽光発電所」の施工を開始した。11月に売電を開始する予定となっている。
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「一軸式追尾型」架台で発電量1.2倍以上
24円案件でも32円のIRRを確保
岡山県北東部に位置する勝央町は、緩やかな丘陵に豊かな自然と田畑が広がっている。「晴れの国・岡山」は、全国的にも太陽光発電の開発が活発な地域で、勝央町をクルマで走っていても、住宅屋根のほか、野立ての太陽光パネルが目に付く。
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強風でもめくれず、歩きやすい国産の樹脂製水上架台
発泡材を充填して安定性を高め、水を入れて外周の重しに
愛知県高浜市にある貯木場跡の池に、出力1.99MWの水上設置型のメガソーラーがある。プリント基板や半導体パッケージ関連材料、水力発電などを手掛けるイビデンの衣浦事業場内に立地し、2016年2月に稼働した。発電事業者は、子会社のイビデンエンジニアリング(岐阜県大垣市)となる。
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上下水道への「ふた」が起点に、安定・信頼性が武器の水上太陽光用フロート
柔軟性の高い配置に対応、パネル配置の工夫で低コスト化も
兵庫県中部、加東市に広がる稲作地域。三つ並んだ池に、太陽光パネルが浮ぶ。すべて農業用ため池で、加東市屋度地区の水田などに水を供給している。
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台湾の水上太陽光で拡大、生け簀の技術を転用したフロート
第一号案件は奈良県、堅牢性に利点
奈良県で2015年7月、出力約1.4MWのメガソーラーが稼働した。水上と地上設置で構成され、前者は約0.9MW、後者は約0.5MWとなる。水上に太陽光パネルを浮かべる部材であるフロートに、従来とは異なるタイプを採用し、関心を集めた。
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水上に太陽光パネルを浮かべる「フロート」の開拓者、シエル・テール
フランスで開発も、普及は日本で先行
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の施行以降、日本各地で太陽光発電所が開発され、次第に条件の良い用地が減りつつある。そんななか、池や湖、ダムの水面にパネルを浮かべる水上型太陽光発電所の開発が盛んになりつつある。
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架台一体型のコンクリート基礎で、施工性や耐久性を向上
発電サイトの地元企業と納入を分担、1日のパネル設置枚数は2倍に
北九州市にある響灘地区は、日本海に面した埋め立て地にある。新日鉄住金や旭硝子などの工場や事業所、廃棄物処分場のほか、最近では、広大な土地を生かして、メガソーラーや風力発電所の集積地としても知られる。響灘地区のメガソーラーでは、基礎から架台まで一体化したコンクリート二次製品を置き、その上にレールを乗せ…
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折板屋根を知り尽くし、最適にパネルを設置できるサカタ製作所の金具
4万種の金具で耐荷重、施工性、コストを満たす
サカタ製作所(新潟県長岡市)は、1951年の創業以来、金属屋根部品の専業メーカーとして事業を展開してきた。工場や倉庫、空港、展示会場など、大型の建物で多く採用されている折板屋根向けの金具で、「約60%を占める国内トップ企業で、国内のすべての屋根メーカーと取引のある唯一の金具メーカーだ」(坂田 匠社長…
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「垂木」を半減、メガソーラー全体の施工性と信頼性を向上するFRP架台
材料の特性、電気と建築のノウハウを融合して開発
NTTファシリティーズと、旭硝子の子会社のAGCマテックス(神奈川県相模原市)が共同で開発した、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)による架台を採用したメガソーラーが相次いで稼働を開始した。NTTファシリティーズは、太陽光発電所の建設に関して国内でトップクラスの実績を持つ。一方、AGCマテックスは、…
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1MW規模なら10人・3週間で工事完了、施工性に優れる独シュレッターの架台
累積で15GWの実績 世界最大の架台メーカー
ドイツ・ミュンヘン郊外に本社を置く独シュレッターは世界最大の架台メーカーである。欧州・米国・アジア・アフリカなど、これまで世界に出荷した太陽光発電向け架台は出力換算で累計15GWに達する。世界第2位の中国メーカーの累積出荷量が5GW程度と見られることから、ダントツの世界一ということになる。
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世界最大級の架台メーカー、建設費削減を武器に32円市場で拡大目指す
世界で300MWの実績 施工が容易な欧州製架台
スイスとオーストリアに挟まれた面積わずか160km2の小さな国、リヒテンシュタインに本社を置くヒルティは、太陽光パネル用架台で独シュレッターとシェアナンバーワンを争う世界トップクラスのメーカーだ。2013年までの累計の出荷量はパネルの出力に換算して3000MW(3GW)に達する。これは日本国内でこれ…
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北海道の太陽光は“道産子架台”に任せろ! モノづくりで踏ん張る地場企業
元商社マンが目指す鉄と農業と再生エネの共生
オホーツク海に北辺が接する北海道北見市。ここに立地する板金加工業の北日本サッシ工業は、道内の地場企業としては最大規模の太陽光発電用架台メーカーに成長した(図1)。架台作製が軌道に乗り出し始めた2013年12月期の売上は7億8000万円と、前の期の4億5000万円規模から大きく伸ばした(東京商工リサー…
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<第2回>「20年保証」を実現した研究マインド 長寿命架台の奥地建産
架台の出荷体制も刷新
太陽光発電用の架台で奥地建産(大阪府松原市)が快走している。2011年3月期に55億1000万円だった売上高は2014年3月期には108億円と3年で約2倍に(図1)、同じ期間に売上総利益(粗利)は5億6000万円から12億9000万円へと2.3倍に増えた(図2)。業績を押し上げたのが太陽光発電用の架…
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<第1回>架台の設計力と加工力で飛躍する日創プロニティ
売り上げは17億円から64億円へ
2006年に福岡県の山田市と嘉穂郡3町が合併して誕生した嘉麻市。南部に筑紫山地が連なるこの地域はかつて筑豊有数の炭鉱都市として栄えた。「そのころはずいぶんな賑わいで、労働者たちは宵越しのカネは持たないという風でした」。旧山田市出身の初老のタクシー運転手がやや寂しげに話してくれた。夜になるとボタ山(石…