放医研内の新治療研究棟
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症状の進行も可視化できる

 タウをPETで可視化する際に使うのが、PBB3と呼ぶ薬剤である。タウはβアミロイドに比べて海馬に蓄積しやすいことが知られている。実際、PBB3を用いた実験では、海馬にPBB3の集積が見られることが確認された。

 さらにこの実験では、認知症が進行するほどタウの蓄積箇所が広がるという現象も確認されたという。一方、βアミロイドは認知症の症状が軽い場合でも既に広範囲にわたって蓄積されていることが知られている。つまり、タウの可視化は、βアミロイドの可視化では実現できなかった「認知症の進行度の客観的な指標になる」(島田氏)ことが分かったのだ。

 この他、タウの蓄積箇所と、その場所に応じて発症する神経症状に明確な対応があることも分かってきた。この結果を利用すれば、分子イメージングを使って認知症の要因を明確に区分し、「患者ごとにオーダーメードの治療を行える可能性がある」(島田氏)。こうした知見を生かしつつ、今後は予防的介入や局所療法の手法を確立することが重要になると島田氏は述べた。