山寨機の淘汰が潮目に

 日本の部品メーカーにとって中国の携帯電話市場は、一定の売り上げは確保できるものの、日本や欧米市場に比べると「未開の地」ともいえる状態だった。部品を納入できる中国地場の端末メーカーが少なかったからである。

 中国では商習慣の欧米化が進んでおり、代金回収などのリスクはある程度下がっている。ただ、中国の携帯電話市場には「違法の山寨機が主流を占めている」という企業統制上の大きなハードルがあった。正規品の端末を作っている企業とは取り引きできるが、出回っている端末の数は山寨機のほうが圧倒的に多かった。中国政府の認可を受けずに山寨機を製造している企業と取り引きをするのは、日本の企業としてリスクが大きすぎる。このため日本の部品メーカーは、中国市場向けには積極的に部品供給を拡大できない状況が続いていた。

 また、山寨機に日本の部品が使われていたとしても、部品メーカーが把握できない非正規の流通ルートで供給されているケースがほとんどだったという。ある部品メーカーの幹部は「山寨機を入手して分解してみたら、その山寨機を製造している企業とは取り引きがないのに、うちの部品が使われていた」と打ち明ける。

 しかしスマートフォンが主流になりつつある今、状況は変化している。山寨機の勢いが衰えたことで企業統制の問題がクリアされ、中国市場に部品を供給しやすくなった。正規のスマートフォンが市場に多く流通するようになり、日本の部品メーカーに大きな商機が生まれている(図1)。

図1 日本の部品メーカーに商機
数億台規模の普及が見込める中国市場は、高性能・高機能な部品を得意とする日本メーカーにとって大きなビジネスチャンスとなる。違法の山寨機が衰退しつつあることが追い風になっている。
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 「中国メーカーの品質に対する意識が変化していることも、日本の部品メーカーにとっては追い風になっている」。こう指摘するのは、アルプス電気 コンポーネント担当取締役の笹尾泰夫氏だ。シェア争いが激化する中、中国の端末メーカーの多くがブランド構築に注力していることが背景にある。中国でも消費者の意識が高まり、故障問題などを抱える端末の「悪い噂」は、インターネットを通じてあっという間に広がる。故障の少ない端末を目指す取り組みの一環として、日本の高品質な部品を採用するメーカーが増えているという。