企業を去ることを余儀なくされ、行き場を失ったかに映る半導体技術者たち。だが、蓄えてきた知見を生かせるフィールドは、実は無限に広がっている。求められているのは、殻を破って新天地へ飛びだす勇気だ。

 「半導体の応用のすそ野はタテにもヨコにも大きく広がっている。思い切って“越境”すればいいだけ。うつむく必要はない」。

 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科 教授の竹内健氏は、半導体技術者を取り巻く現状をそう感じている。タテの広がりとはハードウエア/ソフトウエア/サービスといった半導体ビジネスの「階層(レイヤー)」の広がり。ヨコの広がりは「分野」の広がりだ(図1)。

図1  広がる活躍のフィールド
半導体技術者の活躍の場は、同じ業界内の従来とは「異なるレイヤー」や、半導体分野の知見を必要とする「異分野」へと広がりつつある。
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 竹内氏自身、越境者である。東芝のフラッシュ・メモリ設計者だったが、2007年に大学へ転身。近ごろは研究分野でも越境している。ビッグデータのリアルタイム処理に必要なストレージやソフトウエアの研究に力を注いでいるのだ。「半導体を“ 作る技術”も重要だが、今は“使う技術”でビジネスを生みだす時代」(竹内氏)との思いが背景にはある。医療や農業、建設といった新しい応用分野にも常にアンテナを張り巡らせている。かつてに比べてフラッシュ・メモリの大容量化や低コスト化が進み、応用に厚みが出てきたことで、同氏自身の活躍の場もグッと広がってきた。