当然だが、日本の自動車メーカーにとってインドは大きなビジネスチャンスを秘めた市場だ。ここで、今回のAuto Expoから見えてきた日本の各自動車メーカーの動向をまとめてみよう。
スズキ(Maruti Suzuki社)
インドでは、「スズキ」という名前が小型車の代名詞になっている。その知名度の高さを生かし、Maruti Suzuki社はクルマのフルラインアップ化と同時に、これまでTata Motors社の「Tata Ace」の独壇場だった小型トラックの開発を、排気量0.8L(800cc)の軽商用車をベースに行っている。乗用車でトップシェアを持つMaruti Suzuki社は、都市部だけではなく、人口の約70%を占める農村に対して役立つ商品を投入することで巨大市場への足固めを確実にする戦略だ。将来的に開拓余地の多い農村部の需要の取り込みがシェア拡大につながるだろう。
加えて、SUV/クロスオーバー車である「SX-4S-CROSS」(図27)や「Grand Vitara」(図28)などでラインアップを強化し、今回のAuto Expoでも幅広い展示を行った。
乗用車部門ではこれから買い替え需要が増えてくるだろうと予測される。買い替え需要を増やすためには、現状のクルマに何か付加価値を付けなければならない。その1つが快適性の向上である。新型小型車「CELERIO」では、5速MTにクラッチとシフト操作を自動で行う電動油圧方式のアクチュエーターを組み合わせた新トランスミッション「Auto Gear Shift」を開発し、MT車と遜色ない価格と燃費を達成した(図29)。CELERIOの最高級グレードにはエアバッグやABS、近距離無線通信規格の「Bluetooth」、アルミ合金製ホイールが設定されており、顧客の高級志向に耐え得る仕様となっている。CELERIOの競合車には、ホンダの「Brio」(図30)や、韓国Hyundai Motor社の「Grand i10」(図31)、Tata Motors社の「Bolt」(図32)、米General Motors社の「Beat」(図33)がある。