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 大阪大学大学院 医学系研究科 教授の不二門尚氏は、2014年4月2~6日に東京都内で開催中の「第118回 日本眼科学会総会(118th JOS)」で人工網膜の開発動向について講演した。講演タイトルは「次世代人工網膜の展開」である。

 大阪大学では、臨床応用が先行して進んだ人工内耳を追う形で、2001年に人工網膜の開発に着手した。人工網膜は、眼鏡に取り付けたCCDカメラで撮影した映像を、患者の頭部に埋め込んだ半導体チップ(デコーダIC)で電気信号に変換し、眼球に埋め込んだ電極を介して視神経に信号を伝達するという仕組みで動作する。デコーダICには、頭部に外から当てるコイルを介して電力と電気信号を供給する。

 同大学では、STS方式と呼ぶ人工網膜の開発を進めている。眼球の白目部分(強膜)に電極を埋め込むタイプである。2010年に開発した第1世代品は、49チャネルの電極を備える。ただし、実際に動作する電極の数は電極に接続するワイヤーの数で決まり、9個にとどまっていた。それでも2件の手術例では、患者が目の前にある物をつかめるようになるなど視力の回復が見られたという。