メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、発電事業者が電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 売電事業のため、系統連系して発電電力を逆潮流させるには、事前に電力会社との連系協議を経る必要があります。連系協議では多くの場合、変電所からの送電距離に応じた「力率」を指定されます。

 電力系統に送電する際は、指定された力率に制御しなくてなりません。これを「力率一定制御」と言い、系統の電圧上昇を抑制するのが目的です。具体的には、無効電力を電力系統に送り込む制御を指します。

 力率制御が必要になるのは、メガソーラーが発電した電力を、電力系統に送電すると、系統電圧が上昇するからです。発電電力を系統に逆潮流させるには、系統のインピーダンス分による電圧上昇分に加え、さらに少し高い電圧をパワーコンディショナ(PCS)で発生させることによって生じる電圧差を使います。この結果、電力を流し込まれた電力系統側の電圧が上昇します。

 第5回で紹介したように、電力系統の電圧の上昇幅は、電気事業法で規定されています。こうした電圧の上昇分を抑制する対策として、「無効電力」を送り込み系統のインピーダンス分によって上昇する電圧上昇分を相殺し、抑制させます()。

発電時に系統の電圧が上昇するメカニズム
送電線が長くなるほど、インピーダンス分による電圧が大きくなり、電圧上昇分が増える(出所:著者)
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 「無効電力」とは、聞きなれない用語ですが、需要側で仕事をして消費される「有効電力」に対して、仕事に使われず、再び系統に戻ってしまう電力を指します。英語のReactive Powerというのは、そのイメージを表現しています。

 PCSが出力する有効電力は、太陽光パネルにより発電した直流電力を交流に変換して出力するもので、無効電力は、電力系統からPCSが取り込んだ電力から出力するものです。

 このように、太陽光パネルが発電した電力から、無効電力を作り出すわけではありませんので、発電損失は基本的には生じません。

 しかし、太陽光パネルからの入力と、無効電力を出力するための電力系統からの入力の両方の合計が、PCSにとっての負担となります。

 このため、PCSにとっては、力率一定制御によって、無効電力の出力を増やすほど、そのために必要な電力系統からの入力が増えることになります。その分、太陽光パネルからの入力を制限しなければならないという問題が生じます。

 系統連系規程では、力率一定制御の注入限度の目安を85%、つまり、無効電力の出力は最大で15%と決められています。このことが実際のメガソーラー事業に与える影響については次回、詳しく解説します。

(次回は、4月16日(水)に掲載予定)

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