今、日本の報道などではインド経済の失速感が伝えられるが、実際に同国に足を運んでみると、モータリゼーションの高まりに驚く。実際には、インドの自動車産業の発展は加速している。インドのモーターショー「Auto Expo」を見れば、そのことを実感できる。

 Auto Expoは、2014年で12回目になる(「12th Auto Expo--The Motor show 2014」)。第1回は1986年に開催されたのだが、国内向けの展示だった。当時はインドの国産車といっても、欧州や日本の自動車メーカーから技術を移転して造っていた。そのため、出展社はMahindra & Mahindra、TELCO(現Tata Motors社)、Premier Automobiles社、Hindustan Motors社、そして、日本のスズキとインドの合弁のMaruti Udyog社 (現Maruti Suzuki社) だけだった。2年ごとの開催となったのは1998年からで、同年にようやくTata Motors社が初の国産乗用車となる「Tata Indica」を発表した。

 インドの自動車産業の発展を加速させたのは、インド政府が2006年に立案した新自動車政策「Automotive Mission Plan (AMP)」だ。この中でインド政府は、2016年までに「世界第7位の自動車生産国になる」という目標を立てたが、その目標は6年も前倒しした2010年に達成されてしまった(図1)。筆者は2006年に開催された第8回Auto Expoから毎回会場を訪れているが、インドのモーターショーとして大きく変化を遂げたのは、2008年に開催された第9回Auto Expoからである。

図1◎インドの自動車生産台数の推移。同国の市場は拡大の一途をたどっている
図1◎インドの自動車生産台数の推移。同国の市場は拡大の一途をたどっている
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 第9回Auto Expoで注目を集めたイベントは、Tata Motors社が開発した超低価格車「Nano」のお披露目だった。だが、低価格車の開発に力を入れたのは同社だけではない。自由化された巨大な市場をターゲットに、日本、欧州、米国、そしてインドの各自動車メーカーがこのAuto Expoを、「低価格小型車の発信基地」と捉え、排気量1.2L以下で、価格が5~7ラック(82.5万~115.5万円、1ラック=16.5円換算)のクルマを発表した。会場は大盛況。身動きできないほど多くの来場者が訪れ、インドのモータリゼーションの発展と将来性を実感した。このときから6年が経過した今も、Auto Expoの盛況ぶりは変わらない。インドの自動車産業とクルマ社会の変遷を知るには、Auto Expoが一番だ。

 これまでAuto Expoは1月に開催され、会場はニューデリーの中心地にあるPragati Maidan国際展示場だった。そして、同じ会場で自動車と自動車部品の両方の展示を行っていた。ところが、出展社の増加により展示スペースが手狭になったことで、クルマ〔4輪車と2輪車、3輪車(オートリキシャ)〕の展示場をウッタルプラデシュ州Greater Noida1のIndia Expo Martに移し、自動車部品の展示場をそのままPragati Maidan国際展示場で行うことにした。これにより会場を拡大したのである。