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水郷の街・潮来市に関東最大のメガソーラーが竣工

環境ベンチャーの主導による地域貢献型発電所

2014/03/18 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 茨城県潮来市は、霞ヶ浦と北浦に挟まれた水郷の街。江戸時代には水運の要所として栄えた。いまは東関東自動車道の終着地でもあり、クルマの便の良さから、「道の駅いたこ」は、多くのドライバーで賑わう。2014年2月1日、この道の駅に隣接した18haもの土地に、出力14.7MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「水郷潮来ソーラー発電所」が完成し、竣工式が開催された。稼働中のメガソーラーとしては現在、関東で最大規模になる(図1)。

図1●水郷潮来ソーラー発電所の航空写真
(出所:潮来市)
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 道の駅の敷地内には、メガソーラーを一望できる展望台がある。館内の随所に「水郷潮来ソーラー大展望台」との案内を掲示し、潮来の新名所としてアピールしている。約6万枚もの太陽光パネルが整然と並ぶ光景は、東京ドーム3.8個分にもなり、展望台から見ても、最も先のパネルは、互いに重なってしまい、青い海のように見える(図2)。

図2●展望台から見たメガソーラーの眺め
(出所:日経BP)
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環境ベンチャーが全体の計画を主導

 発電事業主は、特定目的会社(SPC)の水郷潮来ソーラー(茨城県潮来市)。立地する土地は、潮来市と複数の一般地権者が所有する。地権者が土地管理組合を作り、潮来市が代表を務める。水郷潮来ソーラーは、この土地を借り、売電事業を営む。水郷潮来ソーラーへの出資比率は、環境ベンチャーのレノバ(東京都千代田区)38%、ミツウロコグリーンエネルギー32%、そして、芙蓉総合リース19.9%、みずほキャピタル10.1%という構成だ。レノバがデベロッパーとして事業計画を主導し、同社の木南陽介社長が水郷潮来ソーラーの社長も務める。

 レノバは、2014年1月に旧社名のリサイクルワンから変更した。2000年に木南社長が創業し、リサイクル事業を主体に成長してきた。日本を代表する環境ベンチャーとも言える。「メガソーラー事業を展開し始めたことで、社名と事業内容が合わなくなったため、社名の変更を決意した」と木南社長が言う。大手資本をバックにしたデベロッパーが、全国で巨大なメガソーラーの案件発掘と建設を競っているなか、約15MWものメガソーラーをベンチャー企業が主導している例は珍しい。この点、木南社長は、「ベンチャー企業だからこそ、潮来市から受注できた」と振り返る。

 「道の駅いたこ」に隣接した遊休地にメガソーラーを建設するプロジェクトは、潮来市による公募型プロポーザル方式で、2012年10月に発電事業者が決まった。レノバが主導する企業団のほか、複数の大手企業が応募した。潮来市は有識者による選定委員会を設置、同委員会による評価の結果、最終的にレノバの主導するグループの提案に対する評点が最も高かった。評点は、土地の賃借条件のほか、政策効果や地域貢献など総合的な視点で評価する。「最終的にレノバのグループを選んだのは、総合的な視点で評価したものだが、同グループの地域貢献への提案は特に評点が高かった」と潮来市の塙誠一・企業誘致推進室長は言う。木南社長も、「潮来市が広大な遊休地にメガソーラー建設を決断するまでの経緯、そして同市が東日本大震災の被災地であることも踏まえ、地域に貢献できる施策を提案内容に盛り込んだ」と提案内容の特徴を話す。

「太陽のめぐみ基金」を創設

 その地域貢献内容とは、メガソーラーを望める展望台を建設し、環境教育などの場として活用しやすくすること(図3)。発電事業を行うSPCの本社を潮来市に置き、法人市民税を潮来市に納めること。そして、隣接する道の駅の屋根上に太陽光パネルを設置するとともに、その発電電力を蓄える可動式蓄電池を併設して、道の駅の防災拠点化に貢献すること──などだ。「こうしたきめ細かな地域への貢献策は、大手企業にはできない」と木南社長は言う。

図3●展望台は発電事業者の水郷潮来ソーラーが寄付した
(出所:日経BP)
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図4●竣工式では、木南社長から市内の学校長に100万円の目録を贈呈
(出所:日経BP)
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 事業者として選定された後も、水郷潮来ソーラーの木南社長は潮来市からの要望を聞きつつ、追加的な貢献策を検討してきた。その1つが、「太陽のめぐみ基金」だ。これはメガソーラー事業の収益の一部を地域貢献のために寄付するものだ。まず、2月1日の竣工式で、木南社長が潮来市の小中学校長に100万円の目録を手渡した(図4)。潮来市内には6つの小学校と、4つの中学校があり、各校に10万円を寄付した。今後、この基金をどんな形で運営し、発展させていくか、現在、潮来市と協議している。

 水郷潮来ソーラー発電所を建設した場所は、「道の駅いたこ周辺地区」と呼ばれ、市が農地を買収し始めて以来、20年以上、その有効利用を巡って議論され続け、その間、24.5haもの土地が遊休地となっていた。もともとは、1987年に減反政策と地域振興を結びつけるために、農園を貸して使用料を得る観光農園構想に始まった。その後、数回の計画変更を経て、潮来水郷楽園構想がまとまり、開発許可を得たものの、全体で52億円という膨大な事業費が市の財政に与える影響が大きいこともあり、首長の交代とともに凍結された。

 1998年には、道の駅整備構想が計画され、約2haを事業地として、建設が動き出した。それ以外の土地についても、工場を誘致するために、盛り土工事を行うなど、整備してきた。だが、生産の海外移転が進むなか、目論見通りに工場を誘致できなかった。潮来市はこれまで、道の駅いたこ周辺地区に対して、用地の取得費や設計委託料、築堤の工事費などに約25億円を投資してきた。加えて、買収し切れなかった民有地の借地料や草刈り費用など毎年600万円の維持費がかかっている。

潮来市には20年で約11億円の収入に

 2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートして以来、メガソーラーの立地場所として、道の駅いたこ周辺地区に対する問い合わせや事業計画の提案が多くの企業から潮来市に寄せられるようになった。市としては、これまで投資した金額を考えれば、雇用効果の大きい工場の誘致に望みをつなぎたい半面、これ以上、維持費をかけ続けることもできず、苦渋の決断として、メガソーラーの立地に踏み切った。

 工場ほどの雇用創出効果はないものの、水郷潮来ソーラー発電所が稼働することによって、潮来市には20年間で約11億円の収入が見込める。その内訳は、土地の賃借料が約6億7600万円、固定資産税の推計額が約3億円、法人市民税の推計額が約1億4000万円だ。土地の賃借料については、当初、潮来市は1m2当たり年間180円以上と公表していたが、最終的に1m2当たり年間250円での契約となった。加えて、毎年600万円かかっていた維持費がなくなる。ただ、それでも、これまでに投じた25億円には及ばないのが現実だ。木南社長が、「地域への貢献」を前面に押し出したのは、こうした経緯を踏まえている。

 環境ベンチャーならではの地域貢献策に強みがあるとはいえ、事業費を工面できなければ、メガソーラーを建設できない。連結売上高43億円(2013年5月期)のレノバが、総額で40億円に及ぶ巨大なメガソーラー事業を主導できたのは、プロジェクトファイナンスの組成に成功したからだ。その背景には、買取価格が40円(税抜)であることに加え、規模のメリットを生かした効率的な調達や施工などにより、プロジェクトIRR(内部収益率)を7~8%確保したことがある。事業費の約40億円のうち、9割はみずほ銀行から融資を受けた。それでも、DSCR(デットサービスカバレッジレシオ)は1.5倍となった。これは負債の元利払いに対するキャッシュフローの倍率で、返済の余裕を各期ごとに表す指標だ。DSCR1.5倍とは、収入から租税公課と経費を除いたキャシュフローの額が、元利支払い額の1.5倍あることを示す。

中国の太陽光パネル工場を訪問して生産管理を確認

図5●パネルはインリー・グリーンエナジー・ホールディング製を採用
(出所:日経BP)
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図6●パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
(出所:日経BP)
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図7●コンクリート二次製品の置き基礎のうえに架台を装着
(出所:日経BP)
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 設計から調達、建設に際しては、バンカビリティ(融資適格性)に配慮した。EPC(設計・調達・建設)サービスとO&M(運営・保守)は、メガソーラーの建設で実績の多い東光電気工事に委託。太陽光パネルは、2012年に世界シェアトップだった中国のインリー・グリーンエナジー・ホールディング製(図5)、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を選んだ(図6)。また、コンクリート二次製品による置き基礎を採用した(図7)。TMEIC製PCSは、実績が豊富で信頼性に対する評価も高い。太陽光パネルは、「中国保定市にあるインリーの工場まで足を運んで、製造工程の品質管理や検査などに関して確認した」と、木南社長は言う。

 2014年2月の竣工以来、「順調に稼働しており、発電量は想定を10%超えている」と木南社長は言う。新社名のレノバ(RENOVA)は、ラテン語で「ReNew」を意味し、「環境をもっと新しく」を企業理念に掲げた。土地活用で漂流してきた「道の駅いたこ周辺地区」は、水郷潮来ソーラー発電所として着地し、潮来市に新しい環境をもたらしつつある。

●設備の概要
名称水郷潮来ソーラー発電所
住所茨城県潮来市前川1298-1他
敷地面積約18ha
発電事業者 水郷潮来ソーラー(潮来市辻)
※出資比率はレノバ38%、ミツウロコグリーンエネルギー32%、芙蓉総合リース19.9%、みずほキャピタル10.1%
土地所有者潮来市、複数の民間地権者
発電容量14.7MW
発電開始日2014年2月1日
太陽光パネルインリーグリーンエナジーホールディング製
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
基礎會澤高圧コンクリート製
架台ネミー製
EPC(設計・調達・建設)東光電気工事
O&M(運営・保守)東光電気工事(電気主任技術者はミツウロコグリーンエネルギー)