他施設のバイオバンク事業や研究支援システムへの展開も可能

 こうしたプロセスごとにソフトウエアをモジュール化し、部品ごとに開発したことにより、現場のワークフロー(同意業務、検体の分注・分譲処理、保管、中央バイオバンクへのカタログデータのアップロードなど)に応じて、モジュールを組み合わせて利用できるようになっている。

 「バイオバンク業務の様々なワークフローに対して柔軟に対応できるのがモジュール化のメリット。当センターだけの業務で運用できるだけでなく、ワークフローに違いがある他のナショナルセンターのバイオバンク業務にもアダプトできる可能性があります。その部品の変更開発が容易に行える点が、FileMakerの強みでもあると思います」(渡辺氏)。

 また、アジャイル開発手法によるワークフローごとのモジュール化で現場スタッフの要求に応えてきたことに対し、開発を担当したジュッポーグループ取締役の卯目俊太郎氏は、次のように話す。

 「分注処理や分譲処理、同意処理などの効率化を考える中で、実際に業務に携わるスタッフから様々な要求があるとともに、変更も頻繁にありました。それらを次々に部品として実装して検証しながら、改修するという作業を繰り返して仕上げることができました。ワークフローを見直しながらの開発作業だったのでアジャイル開発でないと難しく、それを可能にしたのがFileMakerです」(卯目氏)。

 BISのもう1つの大きな特徴は、SS-MIX標準化ストレージによる電子カルテの臨床情報抽出における汎用性の高さだ。電子カルテのデータベースから臨床情報を抽出する場合は、必要とするデータをCSVファイルにはき出してもらう、あるいは直接接続するソケットの開発が必要になる。いずれも電子カルテベンダーにデータ構造を公開してもらわなければならないし、抽出データの変更やシステム更新のたびにインタフェースを開発し直さなければならない。

 SS-MIX標準化ストレージは階層化フォルダ構造に、患者ID、診療日、データ種別(各種検査オーダー、処方・注射オーダー、転科・転棟情報など)、各種データファイル群をHL7メッセージ(テキスト)形式で記述・格納している。それらの順番など命名規則が規定されているため、読み取るインタフェースを開発することで汎用的なデータ利用が可能になる。

 「SS-MIX標準化ストレージは約250万円で導入でき、データ形式に若干の方言があるものの異なるベンダーの電子カルテから標準化したデータを抽出できます。BISの仕組みは当センターのバイオバンク業務に留まらず、電子カルテの臨床データを二次利用する研究支援システムとして幅広く展開できる可能性を秘めていると考えています」(渡辺氏)と述べた。

■病院概要

名称:独立行政法人 国立長寿医療研究センター
所在地:愛知県大府市森岡町源吾35番地
開設:2004年3月
Webサイト:http://www.ncgg.go.jp/
導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Server」「FileMaker Pro」「FileMaker Go」、アップル「iPad」