メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、発電事業者が電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 2011年に起きた東日本大震災後に、停電が長引いた教訓から、地方自治体を中心に関心が高まっているのが、太陽光発電システムの自立運転です。

 最初に関心を集めたのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災の時です。停電で真っ暗だった六甲山周辺の中で、一カ所だけ電気がついていた場所があり話題となりました。そこでは、太陽光発電システムの自立運転機能で蓄電池に蓄えた電力を、夜間に給電し続けていました。

 阪神大震災の際には、ガソリンスタンドにガソリンが備蓄されていたのに、停電で給油できなかったという苦い経験もありました。このため、その後、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成で、地域の重要拠点であるガソリンスタンドの屋根に出力10kW程度の太陽光発電システムを自立運転機能付きで配備することになり、整備が進みました。

 今回はまず、自立運転の基本的な仕組みを示します。通常、太陽光発電システムは、太陽光パネルからパワーコンディショナー(PCS)に出力し、系統連系用の制御回路と連系用開閉器を経て、電力系統に送電しています。

 この時、系統が停電すると、PCSはそれを感知して送電を停止します。停電を復旧させるために、系統の設備に触れた作業員が感電したり、系統復電時の系統混触事故を防ぐための対応です。

 ただし、系統が停電している時でも、太陽光パネルは発電できます。そこで、発電し続けて、その電力を災害時などの生活に必要な最低限の照明や、テレビやパソコン(PC)といった情報通信関連機器、飲料水用ポンプなどの負荷に給電できるようにするのが、自立運転です。

 通常、太陽光発電システムは、系統に送電するように制御しています。具体的には、系統電圧よりも少し高い電圧を発生させ太陽光パネルが発電した全電力を系統に流し込んでいます。

 これに対して、自立運転の場合、必要な非常用電力だけを供給する仕組みにします。系統連系とは、まったく異なるPCSの制御が必要になります。

 系統連系制御では、太陽光パネルが最も多く出力できる最大電力点を探して、より多くの電力を絞り出す、MPPT(最大電力点追随)制御によって出力します。これに対して、自立運転では、非常用負荷が要求した分だけ出力します。ここでは、MPPT制御は実現できません。

 自立運転制御では、非常用負荷電力に応じて、その時発電している太陽光パネルの発電特性と、非常用負荷電力が吊り合った電圧で発電します()。この時、PCSは、変動する直流電圧をPWM(パルス幅変調)制御により交流出力電圧が一定(定格)となる定電圧制御を行うとともに、電源周波数50Hzまたは60Hzに一定制御します。

自立運転制御では、非常用負荷電力に応じて、その時発電している太陽光パネルの発電特性と、非常用負荷電力がつり合った電圧で発電
(出所:著者)
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 こうした違いを一つの回路で実現することは難しく、系統連系時と自立運転時で制御回路を切り替えて対応します。系統が停電した場合、安全性を担保する意味から手動で自立運転回路に切り替えるのが望ましいとされています。

(後編は、3月19日(水)に掲載予定)

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