再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行されてから、太陽光発電所の建設地として、耕作放棄地などの活用に注目が集まっている。ただし、そこには農地法などに基づく規制など、いくつかの障害もあった。こうした状況の中、農山漁村に再エネを円滑に導入し、同時にその地域の活性化につなげていくための法律が成立した。前回に続いて、農林水産省 食料産業局 再生可能エネルギーグループの信夫隆生グループ長に聞いた。

――売電収益の一部を使うという、農山漁村を活性化する取り組みについては、どのような方法を想定しているのか。

農林水産省 食料産業局 再生可能エネルギーグループの信夫隆生グループ長
(撮影:清水 盟貴)

信夫 「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(農山漁村再生可能エネルギー法)では、その地域ならではの農林漁業の課題に応じて、再エネ発電設備の整備と併せて行う「農林漁業の健全な発展に資する取組」を各市町村を中心に考えてもらうこととしている。荒廃農地の再生利用に向けた除草や灌木の伐採・抜根、地域の農産物の直売所の建設・運営、木質バイオマス発電での地域の未利用間伐材の使用など、さまざまな方法が考えられる。

 実例を紹介すると、例えば、高知県高岡郡梼原町では、町が主体となって風力発電設備を導入し、売電収益を森林間伐の交付金に充てたり、ペレット向け間伐材の搬出費用を補助したりしている。梼原町の林野率は91%であり、発電事業を持続的に経営しつつ、売電収益を地域の重要な資源である森林の保全や木材の利用に活用することで、地域の発展にも寄与している。

 農林水産省でも、2012年度(2012年4月~2013年3月)の補正予算の「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立事業」により、売電収益の地域還元モデルの創出に取り組んでいる。

 この事業は、売電収益の5%以上を地域の農林漁業のために活用してもらうことを前提に、農林漁業者が主体となった再生可能エネルギー発電設備の整備に対して補助するものである。補助金ではあるが、毎年度の売電収益から補助金相当額を返還してもらう融資型の補助で、3件採択した。農林漁業者は地域で生産活動を行う者であり、彼らが中心となって発電事業を行えば、売電収益そのものも地域に還元される。

 結果として3件ともに太陽光発電が対象となった。地域合意の形成や環境アセスメント(環境影響評価)に時間を要してしまうことの影響か、電源は太陽光発電のみとなったが、売電収益を活用した取り組みは多様なものとなっている。