――最近は、「PVRessQ!」の対外的な活動を控え気味にしていると聞いた。

産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏
(撮影:森田 直希)

加藤 その通り。その理由は、PVRessQ!による太陽光発電システムの現場調査活動の成果や活動理念を、悪用するメンテナンス(保守)事業者が目に付くようになってきたからである。

 PVRessQ!が、これまでメンテナンスの重要性を強調してきたため、かえってそのことが、設計や設置という最初の段階で多少、誤りを見落としても、後から修正すればよいという風潮を助長している面がある。このことについては、われわれも大いに反省しなければいけない。

 第1回で紹介したように、本来は、設計や設置の段階で、後々問題が起きないように手を打っておくべきである。当たり前のことだが、改めてその重要性を強く認識している。こうした理念をより正しく伝える活動に転換していきたい。

吉富 今後は、同じ時間、体力、資金を、基礎的な技術教育に関する活動に向けていきたい。特に、火災や構造事故を予防するための技術者教育が優先される。

加藤 その一環として、2013年12月から、定期的な講座を開講した。部品選択を含む発電システムの設計や設置に、正しく取り組む技術者を増やしていく目的である。

吉富電気 吉富政宣氏
(撮影:森田 直希)

吉富 すでに設置ずみ太陽光発電システムのうち、最初から設計や設置に誤りがあるものについては、メンテナンスで対応せざるを得ない。場合によっては、太陽電池モジュールをすべて取り替えるという事態さえ起こりうるだろう。実際に、国内メーカー製の太陽電池モジュールをすべて取り替えた例もある。

 しかし、今後は、太陽電池モジュールの総取り替えだけでは済まない例も出てきそうだ。構造の設計に誤りがある場合には、最初に戻って設計し直さなければならず、労力や費用の負担が大きくなる。どの事業者が資金を負担するのかも、問題となるだろう。

――太陽電池モジュールの総取り替えとなるのは、どのような場合なのか。

加藤 二つの場合が考えられる。一つは、その太陽電池モジュールの製品群に不具合が生じている場合である。これは、元々の製品に起因する問題といえる。もう一つは、太陽電池モジュールに不具合が起きていることは把握できても、問題のある太陽電池モジュールを特定できる手法を持っていない場合である。