メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、発電事業者が電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 特性の異なる太陽光パネルを1台のパワーコンディショナー(PCS)に接続している状態は、影のかかった太陽光パネルと、影のかかっていない健全な太陽光パネルが混在している状態と同じことになります。

 第4回第6回第8回で紹介したように、PCSは、太陽光パネルの出力に対して、電流と電圧を最適に制御し、最大の電力量(電力点)になるように制御しています。この制御をMPPT制御(最大電力追従制御)と呼びます。

 発電の状況が異なる太陽光パネルが1台のPCSに接続されている場合といっても、二つのパターンが考えられ、MPPT制御のプロセスのなかで、それぞれ以下のような状況が想定されます。

 一つは、「ストリング」と呼ばれる、直列に接続した十数枚単位の太陽光パネルの1ストリング全体に影がかかった場合です。PCSからみると、他の影のかかっていない健全なストリングと混在した構成になります。(図1

図1●ストリング単位の影の影響
影のかかっていない健全なストリングXと影のかかったストリングYの最適動作電圧は、大きくずれることはない(出所:著者)
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 この場合、影のかかっていない健全なストリングXと影のかかったストリングYの最適動作電圧は、大きくずれることはありません。このため、PCSのMPPT制御による最適動作電圧Vp1とほぼ一致することから、損失はあまり生じません。ただし、太陽光パネルの種類や特性によっては、動作電圧がずれることがありますので確認が必要です。

 問題は、もう一つのパターンで、同じストリングの中で、部分的に影がかかった場合です。この場合、部分的に影のかかったストリングと健全なストリングの最適動作電圧が異なってくることが問題となります。

 PCSのMPPT制御は、直流の電圧を制御しながら最大電力点を追従するため、例えば、図2に示す、健全なストリングXの最適動作電圧点Vp1で制御すると、部分的に影のかかったストリングYの動作電圧は、最適動作電圧Vp2からVp1にずれてしまいます。これによって、本来ならば、P2の出力を期待できるのに、P1まで低下してしまうのです。

図2●部分的に影がかかったストリングの影響
最適な動作点が二つ生じることになり、本来得られるよりも低い出力となるストリングが出てきてしまう(出所:著者)
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 こうした理由から、季節や時間帯などによって、影のかかる太陽光パネルが存在する場合は、できるだけストリング単位で、影がかかったり、かからなかったりするようなレイアウト設計をすることを推奨しています。もちろん、そもそも、影のかからない場所に配置する設計が望ましいのは、言うまでもありません。

 また、特性の異なる太陽光パネルを同じストリングに混在させて使うことは、加熱などの問題が発生する場合がありますので、原則として不可です。どうしても混在させる必要がある場合は、太陽光パネルメーカーへの確認が必要です。

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