出力が数十MWになるような大型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業の資金調達手段として、一般的になりつつあるのが、「プロジェクトファイナンス」だ。国内では、みずほ銀行などのメガバンクが「プロファイ」手法でメガソーラーに融資している。

 プロジェクト自体の収益性を評価して資金を提供し、返済の原資はプロジェクトが生み出すキャッシュフローが基本になる。企業が金融機関から融資を受ける場合、最も一般的なのは「コーポレートファイナンス」で、企業の持つ資産を評価し、その信用力に応じて融資する。多くの場合、借り手は不動産を担保として提供することになる。これに対し、プロジェクトファイナンスは、実施する企業の資産評価にかかわりなく、プロジェクトの収益性や安全性を評価して、融資が実行される。プロジェクトにかかわる資産は担保にとられるが、借り手の返済責任は事業に関わる財産に限定される。出資した企業が、プロジェクトによる債務全体の返済責任を負わない「ノンリコースローン」の1つだ。

レバレッジでIRRは15%にも

図1●2013年5月に竣工したメガソーラー「日産グリーンエナジーファームイン大分」
(出所:日経BP)
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 国内におけるメガソーラー向けプロジェクトファイナンスの先行的な事例になったのが、大分市に2013年5月に竣工したメガソーラー「日産グリーンエナジーファームイン大分」だ(図1)。出力26.5MWに達する同メガソーラーは、総事業費が約80億円になることから、プロジェクトファイナンスで資金調達した。すでに海外でメガソーラー事業のプロジェクトファイナンスを手掛けていたみずほ銀行を幹事とし、大分銀行、豊和銀行、福岡銀行を加えたシンジケートを組んだ。

 プロジェクトファイナンスによるメガソーラー事業は、事業主体としてSPC(特定目的会社)を設立し、出資企業(スポンサー)がSPCに出資するという形態が多い(図2)。SPCはメガソーラー事業に限定して事業を行う組織で、形態は株式会社や有限会社、組合形式などさまざまなパターンがある。SPCにすることで、倒産リスクが隔離され、出資企業にまで及ばない利点がある。「日産グリーンエナジーファームイン大分」では、日揮が100%出資し、SPCとして「日揮みらいソーラー」を設立した。

図2●プロジェクトファインナスの主な枠組み
(作成:日経BP)
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 一般的なプロジェクトファイナンスでは、事業に必要な資金のうち、20~30%をスポンサーが自己資金から出し、残りをプロジェクトファイナンスによる借入金で賄うことが多い。スポンサーにとっては、借入金の割合を増やすほど自己資本の収益性が高まる。メガソーラーでは、よく「IRR(内部収益率)」が話題になるが、IRRには「プロジェクトIRR」と「エクイティIRR」がある。「IRRが8%」などと言うときは、一般的にプロジェクト全体の投資対効果を見るプロジェクトIRRを指す。エクイティIRRは、自己資本(エクイティ)の投資対効果をみるもので、借入金がなければプロジェクトIRRと等しくなる。プロジェクトファイナンスでは、事業資金の過半を借入金で賄うので、レバレッジ(てこの原理)が効いて、エクイティIRRが高まる。一般的にプロジェクトIRRが8%程度の場合、7~8割を借金で賄えば、エクイティIRRは15~25%まで高まる。

 スポンサーにとっては、自己資金の割合を極力、少なくし、プロジェクトファイナンスで事業資金を賄う方が、エクイティIRRは高まる。実際に、「プロファイ」を手掛ける銀行には、自己資金をほとんど持たないベンチャー企業などからメガソーラーのプロジェクトファイナンスの相談が次いでいる。だが、金融機関にとっては、こうした案件は、「メガソーラーの事業としての質がいくら高くてもプロファイを組成して融資することはない」(大手銀行)と口を揃える。その理由は、スポンサーが事業資金の20~30%を負担することで銀行のリスクが軽減されることはもちろん、スポンサーがある程度、リスクを負担することで責任感が高まり、事業の持続性も高まるという考え方からだ。また、スポンサーが個人に近いベンチャー企業の場合も、「組織がしっかりしていて、メガソーラー事業を複数人で支えていける体制がないと20年間のプロファイは組めない」(大手銀行)と言う。