メガワット(MW)クラスの太陽光発電所を建設するには、億単位の初期投資が必要になる。メガソーラー(大規模太陽光発電所)に適した土地があり、発電システムに詳しくても、資金がなければ売電事業はできない。そこで、強い味方になるのは、金融の仕組みを活用して資金を集めることだ。固定価格買取制度(FIT)を活用したメガソーラービジネスは、相対的に事業リスクが小さいこともあり、さまざまな金融スキームが動き出している。この特集では、代表的なメガソーラー向けのファイナンス手法について解説した。
メガソーラー事業のためのファイナンス講座
目次
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カーポート型太陽光で「第三者保有モデル」、地銀系が資金提供
ファブスコ、阿蘇市の避難所施設で稼働、月200台設置を目標
ファブスコは、避難所を運営する自治体など向けにカーポート型の太陽光発電システムを設置する事業を展開する。電気利用者にとって初期負担のない「第三者保有モデル」を採用し、2017年11月にスタートさせた。
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「共感」が資金を呼ぶ、「再エネ・クラウドファンディング」
福島県のコミニティショップが1カ月で148万円調達
今年1月24日、福島県三春町で「えすぺりソーラー発電所」の設立記念パーティーが開かれた。同発電所は、コミュニティショップ(産地直売店)「えすぺり」の屋根上に40枚の太陽光パネルを設置し、最大で出力9.76kWを低圧送電線に連系する。
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「BOT」で太陽光発電事業に乗り出す埼玉県羽生市
<第9回>5年リース後に所有権を市に移転
羽生市は、埼玉県の北東部、利根川を隔てて群馬県に隣接する。水利がよく土地も肥沃なため、早くから農耕文化が栄え、古い塚や古墳から多くの埴輪が出土した。「羽生(はにゅう)」の地名は、「埴輪(はにわ)」から転化したともいわれている。
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“身の丈”を超えられる「メザニンローン」の威力
<第8回>八戸市の田名部組が65億円のメガソーラー事業を実現
「ファイナンスを工夫することで、地方の企業でもここまで大きなプロジェクトを主導できた」。田名部組(青森県八戸市)の田名部智之社長は、同社が立ち上げた総出力16.85MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業「アマテラス プロジェクト」の意義を強調する。
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<第7回>屋根貸し太陽光でプロジェクトファイナンスを組成
楽天など3社が「GK-TKスキーム」でSPCを設立
岡山県北部、美作市にある湯郷温泉は、1200年前に高僧・円仁法師が傷ついた一羽の白鷺に導かれ、発見したと伝えられる名湯。情緒ある温泉街には、趣のある旅館やホテルが立ち並ぶ。中でも「湯郷観光ホテルかつらぎ」は老舗ながらモダンな趣向が特徴だ(図1)。
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<第6回>エクイティとローンの中間「メザニン」の可能性
ベンチャー企業が20億円規模の事業に挑戦
岡山県久米南町は、岡山県のほぼ中央部に位置する。豊かな森林に囲まれた山間では、古くから稲作が営まれ、美しい田園風景が広がる。農林水産省が認定した「日本の棚田百選」に選ばれた地域もある。
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<第5回>初期投資と運営業務の負担を回避できる「包括リース」方式
三菱UFJリースは、設備管理ノウハウ生かし屋根貸しに応用
群馬県太田市は、2012年7月1日の固定価格買取制度(FIT)の開始当日、出力1.5MWのメガソーラー「おおた太陽光発電所」を稼働させた。太田市が開発・分譲する工業団地内の遊休地に約1万枚のCIS化合物型太陽光パネルを設置した。自治体が単独でメガソーラー事業を手掛ける最初のケースとなった。「おおた太…
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<第4回>中小企業でも「メガ」が可能になる「ABL」
200案件以上の太陽光発電に融資を果たした常陽銀行
茨城県は、関東各地の工業地帯に近いこともあり、有望な中小企業が操業している。一方で、都心に比べると土地利用に比較的ゆとりがあり、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の計画も増えている。工場内に遊休地を持つ企業の中には、固定価格買取制度(FIT)のスタートを機に太陽光発電による売電事業に乗り出すケースも…
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<第3回>不動産投信のノウハウを生かす「メガソーラーファンド」
投資の小口化で、大規模発電所のオーナーを幅広く募集
福岡県田川郡川崎町は、福岡県のほぼ中央にあり、南に英彦山、北に福智山を仰ぎ、自然環境に恵まれた地域だ。2013年12月16日、同町の工業用地に約1.7MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「川崎町田原太陽光発電所」が着工した。太陽光パネルはシャープ製を採用し、EPC(設計・調達・建設)もシャープが…
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<第2回>日本が世界に先駆けたプロジェクトボンド
東広島市のメガソーラーが「A格」取得し、投資家から資金調達
2014年1月14日、広島県東広島市で出力約2MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の起工式が開催された(図1)。事業主(スポンサー)は、広島市に本社を構える建設会社、栗本ホールディングス(以下、栗本HD)だ。このメガソーラーは、資金調達面で画期的な手法を採用した。総事業費9億円のうち、6億900…
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<第1回>プロジェクトファイナンスを甘く見ない
スポンサーに求められる組織力と対応力
出力が数十MWになるような大型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業の資金調達手段として、一般的になりつつあるのが、「プロジェクトファイナンス」だ。国内では、みずほ銀行などのメガバンクが「プロファイ」手法でメガーラーに融資している。