「カメムシの里」がメガソーラーに

 実は、メガソーラー建設のプロジェクトが動き出したきっかけは、東松山市に度々寄せられていた市民からの苦情だった。「カメムシの里」――。現在、メガソーラーとエコファームのある東松山市大字松山地区は、これまで地元でこう呼ばれてきた。松山地区はもともと耕作放棄地で、一時期、産業廃棄物を処分した経緯もあり、利用できずに放置された。その結果、背丈ほどの草が生い茂った荒れ地となり、悪臭を放つカメムシが度々、大量発生した。「外に洗濯や布団を干せない」などの不満が市当局者に向かった。市はそのたびに20人以上にもなる地権者に対して、草刈りを要請するなど苦慮してきた。

図5●コンクリートの基礎は地中でつながっている。雑草対策に木質チップを敷いた
(出所:日経BP)
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図6●パワーコンディショナー(PCS)の見学風景。PCSは東芝三菱電機産業システム製を採用した
(出所:日経BP)
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図7●PCSを収納する建屋には中古のコンテナを断熱加工したものを活用
(出所:日経BP)
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 東松山市が埼玉県に松山地区の活用法について相談するなか、県職員と知己のあったスマートエナジーグループを中心にメガソーラーの建設が動き出した。再生可能エネルギーの普及を柱にする埼玉エコタウンプロジェクトの一環にも位置づけられた。一般的に地権者の多く存在する農地を、雑種地などに地目変更するのは、そう簡単ではない。だが、東松山市の松山地区の場合、実体的に農地として活用するのが難しいことや県や市の全面的な支援があったことなどから、短期間で農地転用してメガソーラー建設が実現した。

 メガソーラー建設に際しては、一時期、建設地が廃棄物処分地となっていたことが、土木工事上の課題となった。廃棄物が埋まっているため、50cm以上深く掘れず、本格的な整地も難しかった。そこで、架台の設置では、支柱の基礎と基礎の間を地中でコンクリートを打ってつなげるという手法を採用した(図5)。土地の起伏もそのまま残し、コンクリート基礎の高さを変えることでパネルの高さを揃えた。また、PCSに関しては、変換効率の高い東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図6)。ただ、収納する建屋については、標準品を使わず、独自に中古のコンテナを購入し、改造して代用した(図7)。

発電量は想定を20%も上回る

 「これまでのところ、発電量は見込みよりも約20%も上回っている」と木原マネージャーは打ち明ける。PCSを含めたシステム全体の効率が優れていると、太陽光パネルの発電能力から試算した発電量を上回ることもある。「今後、ここまで上振れした要因を分析したいが、設置地域は風の通り道になっているので、パネルの温度上昇が抑えられ、発電量のロスが少なくなっている可能性もある」と、木原マネージャーは言う。

 2013年8月上旬、完成間近の発電所に、小学生の男の子とそのお母さんが訪ねてきた。夏休みの自由研究にメガソーラーについて調べたいとのことだった。対応した木原マネージャーは、忙しいなかでも、親子の満足いくまで説明してあげたという。「メガソーラーを建設していて最も嬉しかったことの1つ。次代を担う子供たちが少しでも太陽光発電に興味を持ってくれれば、市街地にあるメガソーラーの役割を果たせる」(木原マネージャー)。「東松山かがやき発電所」は、メガソーラーの1つの在り方を示しているようだ。

●施設の概要
発電所名東松山かがやき発電所
住所埼玉県東松山市大字松山地区
事業者東松山かがやき発電所(埼玉県東松山市)
売電開始日2013年8月
発電容量約2MW
企画・開発スマートエナジー(東京都千代田区)
EPC(設計・調達・建設)三平商会
O&M(運営・保守) スマートエナジーサービス
太陽電池セルシャープ製
PCS(パワーコンディショナー)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
架台シャープが施工