中部電気保安協会 本店 保安部 太陽光プロジェクトチーム 橋本 圭一課長
(撮影:日経BP)

メガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設ラッシュの中、電気主任技術者や各地域の電気保安協会の役割に注目が集まっている。出力50kW以上の太陽光発電システムは、電気主任技術者による保安管理が義務付けられ、出力2MW未満ならば、電気主任技術者の業務を外部に委託でき、各地域の電気保安協会がその受け皿になっているからである。前回に続いて、この外部委託の契約件数で国内トップという、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームの橋本 圭一課長に聞いた。

――太陽光発電システムの電気保安ならではの検査機器などはあるのか。

橋本 中部電気保安協会で独自に開発した検査機器もある。例えば、太陽光パネルから接続箱までの直流回路の絶縁抵抗の検査装置である。太陽光パネルが発電中でも、安全かつ短時間に検査できるようにしたもので、マルチ計測器(東京都千代田区)と共同で開発した(図1)。

図1●直流回路の絶縁抵抗の検査装置
太陽光パネルが発電した電力の電圧から、絶縁抵抗の計測と、絶縁不良が生じている場所を特定できる(出所:中部電気保安協会)
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 国の基準で定められた絶縁抵抗値を満たしているのかどうか計測するもので、従来の手法は、直流回路に高電圧を印加し、その際に対象となる帯域間に流れる電流から絶縁抵抗を算出するものだった。

 この方法は本来、無電圧の状態で計測しなければならない。しかし、発電中の太陽光発電システムの直流回路は、電圧が印加されている状況にある。電圧が印加されている状態で測ると、絶縁抵抗値を正確に測定できない可能性がある上、点検作業者にとっては安全面のリスクが高まる。

 このため、従来の方法では、検査の精度と安全性の確保のために、太陽光パネルが発電していない状態で計測する必要があった。太陽光パネルが発電しない夜間に検査するか、昼間に検査する場合には太陽光パネルの上に暗幕をかけて発電しないようにして検査していた。暗幕をかけて回るだけでも、かなりの時間と手間になる。

 新たに開発した検査装置は、太陽光パネルが発電している電力の電圧を逆手にとるもので、検査装置と接続箱と接地をつないだ地絡回路を形成し、太陽光パネルが発電した電力の電圧から、絶縁抵抗の計測と、絶縁不良が生じている場所を特定できる。発電中に簡単に、短時間で検査できる利点がある。