――太陽光発電システムの構造の問題を減らしていくために、第三者の試験・認証機関による認証などは有効なのか。

産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏
(撮影:森田 直希)

加藤 何らかのチェックは必要だろう。こうした需要を汲み取って、ドイツのTUV Rheinlandや米国のULといった、独立系の試験・認証機関が、日本でも太陽光発電に関するサービスを始めている。ただし、日本の太陽光発電業界にとって、本当に必要な試験や認証を実現できる機関なのかどうかは、見極めが必要なように感じている。

吉富 太陽光発電システムの構造を判定するクライテリア(基準)について、見誤っている可能性が捨てきれない。特に、海外の試験・認証機関の日本法人の場合、日本の法令の読み込みが不十分なことが想定される。

加藤 もちろん、第三者の試験・認証機関が、太陽光発電システムの竣工時の点検や、関連設備の納品時に点検できれば理想である。しかし、その実現は容易ではない。

 その理由は、第2回で紹介したように、太陽光発電は電気、構造、土木などの分野を横串で通した技術なのに、現在のところ、研究者まで縦割りの取り組みとなっているためである。

吉富 認証でも、横串が通っていない。太陽光発電システムの認証を手掛けていると謳っている認証機関もあるものの、現状では事実上、太陽電池モジュールを中心に評価しようとする傾向が強い。

加藤 電気から構造まで、本来の意味で、太陽光発電システムを認証できている機関はないと思う。今後、そうした機関の登場に期待したいし、協力したい。

――縦割りの問題は、日本だけでなく、欧米でも払拭できていないのか。他の分野でよく言われるのは、縦割りは日本の弊害で、海外ではうまくいっていると。

吉富電気 吉富政宣氏
(撮影:森田 直希)

吉富 縦割りの問題は、どこにでもある。その中にあっても、幅を持って取り組む例もある。例えば、TUV Rheinlandの積雪荷重評価の研究などは、悪くない。

 ただし、日本は台風や地震が多いなど、太陽光発電システムは、その地域ならではの特徴や条件が大きく影響するものである。それを、他国で確立された借り物の規格で正しく評価できるかというと、難しい面が出てくるだろう。

社会科学者まで巻き込んで価値観の再構築を

加藤 この評価や認証の問題も結局、根本の認識を変えていかない限り、正しく太陽光発電システムを作ることはできないし、コストを過剰に重視する風潮を改めないと解決にはならないと感じている。

吉富 安全価値と経済価値が、混在して取り扱われていているように思う。まず、価値観を整理しなければならない。

 価値観を整理する役割を担う存在として、例えば、学会が考えられる。しかし、太陽光発電を議題に持つ学会への参加者は、技術者や工学者に偏っていて、太陽光発電が持つ社会的な目的性や価値の話を整理するのがあまり上手ではない。

 ただし、この苦手分野は、経済学者や心理学者といった社会科学者の手助けよって、突破できる可能性がある。そうすれば、ただ安くするための議論ばかりでなく、良いものを着実に増やしていくような価値観をたちあげるきっかけになるかもしれない。