メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、「発電事業者」である運営者が最低限の電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 まず、パワーコンディショナー(PCS)そのものの変換効率は、太陽光パネルで発電した直流の電気を、PCSが交流の電気に変換する効率を指します。その変換効率が高いほど、自家消費や売電できる電力が増えます。

 その中でも、見過ごされがちなPCSの低出力領域の効率が重要となります。日本の天候は、雨や曇りの日が多く、日照時間が30%以下にとどまる日が6割も占めるためです。このような条件における効果的な効率改善方法として、PCSのスイッチング損失の低減があります。大きな効果が期待できる方法です。

 スイッチング損失とは、直流を交流の正弦波に変える際に、変換回路を構成する半導体素子を、極めて短時間に入り切りする時に発生する損失です。この損失は、出力の大きさにあまり影響されないことから、低出力時の効率において、より大きな影響を及ぼします。変換回路を工夫することで、このスイッチング損失を低減させることが可能です。

 もう一つの重要なポイントは、PCSの制御によりシステム効率を向上することです。太陽光パネルの出力は、流れる雲などで、日射急変が生じるばかりでなく、温度によっても電流と電圧の関係が刻々と変化しています。その中で、PCSは、電流と電圧を最適に制御し、最大の電力量(電力点)になるように制御しています。この制御をMPPT制御(最大電力追従制御)と呼びます。

 MPPT制御については、第4回第6回の回答と重なる部分がありますので、今回は、そこでは触れなかった内容を紹介します。

 MPPT制御では、常に一定の間隔で太陽光パネルの電圧を変えながら、最大電力点を追い求めています。最大電力点に到達したら、どうなるのでしょうか。

 それでもなお、一定の間隔で電圧を変える制御を続けていれば、最大電力点に到達した後では、次に変えた電圧によって最大電力点から外れてしまい、本来得られるはずだった電力が得られなくなってしまいます。

 また、結晶シリコン系の太陽光パネルのように、最大出力点まで鋭角的な角度で出力が上昇していく特性の太陽光パネルを使うのか、化合物系の太陽光パネルのように、最大出力まで緩やかなカーブを描くように出力が上昇していく特性の太陽光パネルを使うのか、設置する太陽光パネルの出力特性などによっても振らせる電圧が常に一定では不具合が生じてきます。