施工時の配線ミスを発見することも

――大規模な太陽光発電所における、電気主任技術者の業務を教えてほしい。

橋本 外部委託では、電気主任技術者は日常的に契約先の発電所にいるわけではないため、点検に訪問した際の対応を紹介する。

 まず、顧客が発電システムに抱く最も高い関心は、太陽光発電システムが所定の能力通りに発電しているのかどうかや、PCSの異常停止が繰り返し発生していないか、などである。このため、点検時には、発電量の把握が必要だと考えている。

 また、太陽光発電システムの設置数が急増している影響もあって、竣工時の検査が十分になされていない場合が目立つ。発電開始後に、点検業務が中部電気保安協会に移った際に、竣工時の検査では見落とされたミスを発見することがある。

 例えば、配線ミスなどである。プラスとマイナスを誤って配線していたり、太陽光パネル同士の接続が忘れられているといったものである。

 立地によっては、太陽光パネルが割れていることがある。原因を調べてみると、公園の隣にあるために、近隣に住む子供たちが野球をし、その打球が太陽光発電所内まで飛んできているためだったこともある。

 また、一定の広さの土地を確保するために、山間部に設置される太陽光発電システムが増えていることから、鳥獣による被害も出てきている。太陽光パネルが、鳥の糞によって汚れる例は良く聞いていたが、最近では、猿や鹿による太陽光パネルへの被害が出てきている。さらに、パネルの盗難がある。

 太陽光パネルの割れについては、割れそのものが即座に発電に影響するものではないが、割れた部分から雨水が入りこむことによって、発電システムの不具合につながる可能性がある。

 こうしたトラブルや不具合を、発電事業者が日常的に確認することは難しい。この補完の目的で、遠隔監視システムを導入する例が増えてきたものの、まだ手軽に導入できる状況にはない。そこで、中部電気保安協会では、発電事業者に代わって、いち早くトラブルや不具合に気付くような点検に注力している。

本来は対象外の「発電量の把握」まで

――発電システムが能力通りに発電されているのかどうかは、EPC(設計・調達・建設)サービス企業の責務であり、電気主任技術者の役割ではないのでは。

橋本 電気主任技術者の本来の責務には含まれていない。ただし、電気主任技術者の業務は、発電システムに異常が生じていない限り、なかなか理解してもらいづらい面がある。顧客である発電事業者の関心を考慮すると、通常の電気設備の不具合の有無にかかわらず、確認する必要がある。

 そこで、中部電気保安協会では、例えば、発電事業者がインターネット上で発電量を確認できる遠隔監視サービスを用意している。顧客の利益の逸失となる、発電が停止している時間の削減に寄与していくことも重要だと考えている。

 異常を発見した場合には、顧客に連絡した上で、まず現地に出向く。出向いた電気主任技術者が原因を解消でき、送電の復旧が可能であれば、その措置を講じる。発電システムの修理などが必要な場合には、施工業者やメーカーへの連絡を顧客に勧める。

 また、太陽光発電の場合、新規参入の発電事業者が多いことから、施工業者やメーカーと発電事業者が直接、協議するよりも、第三者である電気保安協会が間に入ることで、適切な助言が可能になると考えている。

 中部電気保安協会には、48カ所の営業所がある。電気主任技術者の業務は、自家用設備のトラブル時に、2時間以内に現地に到着するように定められている。このため、われわれは、伊豆の一部の地域以外では、2時間以内に電気主任技術者が現地に到着できる体制をとっている。