“2000年問題”の教訓から出力値を厳格管理

 それでは「製造品質」、すなわち、設計通りの仕様や品質を忠実に再現できているかどうか、どのように確認し、維持していくのか。パナソニックは、製造工程にチェックポイントを決め、製造設備の加工条件の変動を監視するとともに、全量について目視で確認している。そして、完成後には、出力特性などを検査し、不良品を排除する。パナソニックは、出荷する製品の出力値に関しては、特に厳格に管理している。

その理由は、同社内で「2000年問題」と呼ばれる事件が教訓となっている。三洋電機の子会社が引き起こした「発電パネル不正販売事件」だ。1990年代後半、三洋電機子会社が販売した太陽光パネルの一部に仕様より出力の低い製品が多く含まれており、市民団体からの度重なる指摘によって、2000年10月の記者会見で不良品の存在を認め、親会社である三洋電機の社長まで辞任に追い込まれた。三洋電機は、その際に回収した太陽光パネルを使って、岐阜県安八郡安八町の岐阜事業所に「ソーラーアーク」と呼ぶ巨大なモニュメントを建設し、後々までの教訓としている。

 「2000年問題」以降、三洋電機時代からパナソニックに変わった現在まで、工場出荷時に検査した出力が、仕様の出力(公称最大出力)以上のパネルしか出荷しないことに決めた。実は、JISでは、公称最大出力の±10%以内であれば、出荷してもよいことになっている。三洋電機の発電パネル不正販売事件を受け、JPEA(太陽光発電協会)とJEMA(日本電機工業会)は、住宅用太陽光発電システムとして複数パネルをセットで販売する際、システムとしての出力値(工場出荷検査値)は、「公称最大出力値×パネル枚数」を下回らないとの業界自主基準を出した。この自主基準では、公称最大出力を下回るパネルがあっても、同出力を上回るパネルとセットにしてシステム全体として公称最大出力以上になっていれば出荷できる。だが、パナソニックは、システム製品でも、1枚1枚すべてが公称最大出力以上のパネルを出荷している。

 パナソニックは、「HIT太陽電池」という商品ブランド名をアピールし、世界トップクラスの変換効率を誇っている。現在、量産パネルの最高値は22.0%で、2013年2月には実用サイズとして世界最高となる24.7%を研究レベルで達成した。これは、同社の太陽電池の構造が、ほかの結晶シリコン型太陽電池とは異なり、革新性が高いことに起因する。HIT太陽電池は、相対的に価格が高いものの、その発電量の多さに関して市場からの評価は高い。その背景には、HITの独自構造に加え、2000年問題を教訓とした「工場出荷時の検査で公称最大出力を下回ったパネルは出荷しない」という姿勢も寄与している。今後、地上の広い適地が減っていくなか、屋根を活用したメガソーラーが注目される。群馬県太田市では、倉庫の屋根にHIT太陽電池を設置した1MWのメガソーラーが稼働している(図5)。HIT太陽電池の真価を発揮できる場面が増えそうだ。

図5●HIT太陽電池を設置した群馬県太田市の「おおた太陽光発電所」
(出所:パナソニック)
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