大阪府貝塚市二色の浜は、大阪では比較的、温かく海水浴場でも知られる。パナソニックの太陽電池事業の司令塔とも言える「二色の浜工場」は、大阪湾を望む海岸沿いにあり、沖には関西国際空港が目と鼻の先に見える。同工場で太陽光パネル(太陽電池モジュール)を本格生産し始めたのは2004年。現在、同社では、太陽電池のセル(発電素子)とモジュールを国内外の5拠点で製造しているが、セルとモジュールの両方を製造しているのは、国内では二色の浜工場だけだ。パナソニックの太陽電池事業における生産プロセスを統轄する「マザー工場」との位置付けとなっている(図1、図2)。

図1●太陽光パネルのマザー工場である「二色の浜工場」
(出所:日経BP)
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図2●「二色の浜工場」の敷地内で実施している太陽光パネルの長期暴露試験
(出所:日経BP)
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光と高温と多湿、自然界の過酷な環境を再現

 二色の浜工場には生産ラインのある大きな建屋に沿って、1階建ての複数の建物が並んでいる。これらの建屋の中には、太陽光パネルの加速劣化試験を実施する設備がある。「目を傷めるので、このサングラスを付けて下さい」。こう言われて、大ぶりなサングラスをかけて建物に入ると、巨大なライトが太陽光パネルをさんさんと照らしていた(図3)。太陽光パネルは、温度と湿度の高い環境を作れる「高温高湿槽」の中に収められ、ガラス越しに照らされている。これは、パナソニックが「光複合試験」と呼ぶ加速劣化試験の手法だ。自然界の過酷な環境を再現したものだ。

図3●「光複合試験」を実施する照明
(出所:パナソニック)
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 太陽光パネルの耐久試験ではIEC(国際電気標準会議)が国際規格を定めており、JIS(日本工業規格)もそれに準拠している。高温高湿試験はIECやJISの試験項目にもあるが、高温高湿の環境下で、光を照射する「光複合試験」は、パナソニックが独自に取り入れているものだ。一般的な「高温高湿槽」は、鉄製の筐体を断熱材で覆った構造で中は見えないが、パナソニックでは、中のパネルに光を当てるために筐体の一部をガラス張りにした光複合試験用の高温高湿槽を特注した。「実際に太陽光パネルが置かれる環境は、複数のストレスに同時にさらされる。IECやJISよりも厳しい独自の試験を加えることで、信頼性を高めている」と、パナソニックグループ・エコソリューションズ社の岡本真吾ソーラービジネスユニット技術グループ・グループマネージャーは話す。「品質管理で重要なのは、まず耐久性に配慮した設計・開発、次に信頼性や安全性の試験を実施して設計・開発に生かすこと、そして、設計通りの品質を実現する製造管理」(岡本グループマネージャー)。同社では、国際規格に加え、20種類以上の独自試験を実施し、開発・設計に生かしているという。