――太陽光発電の初期コストとして、一般的には、太陽電池モジュールの価格は安くなってきたという認識で、今後は、いかに架台や工事のコストを安くするかという声を多く聞く。

対談する産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏(右)と吉富電気 吉富政宣氏(左)
(撮影:森田 直希)

加藤 こうした認識を真に受けてしまうと、さらに設計や施工のコストを下げる圧力として働いてくる。

 現在でも、正しく構造計算がなされて製品化されたものかどうか、わからないが、コンクリート製の基礎なしで、金属製の杭を地面に打ち込み、架台は単管パイプで組まれているような製品やサービスを見かけるなど、安全性への配慮に不安を感じることがある。

 また、田畑の上に太陽電池モジュールを並べながら、農作物にも太陽光が照射するように工夫し、農業と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングに使われる発電システムの写真を見ると、設計や施工の低コスト化を優先するあまり、安全性への配慮に疑念を抱く発電システムも多いように感じている。

吉富 太陽光発電システムは本来、すべて建築基準法の対象となっているが、除外規定が適用されているものがある。例えば、電気事業法で安全が担保されるものについては、建築基準法の対象の除外となっている。

加藤 そうした基本は、本当に関連事業者に広く知られているのだろうか。

吉富 知られていると感じている。建築基準法の除外規定となる高さ4m未満を満たすように、発電システムの高さを3.99mとしているなどとする製品やサービスが多いことからも見て取れる。

 適用される法が建築基準法か、電気事業法かの違いによって、同じ太陽光発電システムでも、要求される耐力が違うためである。

 わたしが検討したある例では、同じ太陽光発電システムに要求される耐力が、建築基準法では56.4kNなのに対して、建築基準法の除外規定が適用されて、電気事業法になると25.6kNと、1/2以下になった。

 この違いからも、おそらく建築基準法の対象になる方が、一般的にコストがかかることになることが想像できるだろう。