図1●壷阪寺の大観音を照らす照明設備。電源は太陽電池
(出所:日経BP)
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 奈良県高市郡高取町にある壷阪寺は、703年に創建された西国三十三所第六番札所。室町時代に創建された礼堂や三重塔などのほか、特に眼病への霊験で知られる名刹だ。境内は山の斜面伝いにあり、本堂を後に石段を上がっていくと、インドから贈られたという高さ約20mの大観音像にたどり着き、間近から拝むことができる。1983年、この大観音像の足元に2台の照明が取り付けられ、夜でもその姿を照らすようになった(図1)。

 照明の電源には、「観音様を照らすには自然のエネルギーを使いたい」という当時の住職の願いから、太陽光発電システムを使うことになった(図2)。「先代となる当時の住職がシャープ創業者の早川徳次さんと親交があった縁で、シャープ製の太陽光パネルを設置することになった」(壷阪寺の喜多昭真執事)。35Wの太陽光パネル40枚で日中、発電した電力を鉛蓄電池に貯めておき、日が落ちると自動的に観音像を照らすという自立型の電源システムだ。

図2●約30年間、稼働している壷阪寺の太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 現在、この太陽光発電システムが脚光を集めている。「30年間」という稼働実績は、創建から1300年以上の壷阪寺にとっては、一瞬のような時間だが、太陽光発電システムの稼働期間では、国内で最も長いと見られるからだ。特に東日本大震災後、再生可能エネルギーへの関心が高まる中、材料メーカーなどの見学などが相次いでいる。太陽光パネルの耐久性を研究するうえで、その劣化状況などは、研究室では得られない貴重なデータだからだ。実は、壷阪寺の太陽光発電システムは、シャープの太陽光パネルに関する品質管理や製品開発にとっても、すでに重要な役割を果たしている。