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ユーザーメードの医療システムについて様々な考察

システムの安全性・信頼性・継承性の確立をどうすべきか

2013/01/10 13:00
増田 克善=医療ITライター
山陰労災病院の太田原顕氏
山陰労災病院の太田原顕氏
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名古屋記念病院の草深裕光氏
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国立病院機構 大阪医療センターの岡垣篤彦氏
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都立広尾病院の山本康仁氏
都立広尾病院の山本康仁氏
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名古屋大学医学部附属病院の吉田茂氏
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川崎医科大学の若宮俊司氏
川崎医科大学の若宮俊司氏
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J-SUMMITS全国集会でのディスカッションの様子
J-SUMMITS全国集会でのディスカッションの様子
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 医療現場では電子カルテを中心としたベンダー製の基幹システムが導入・運用される一方で、医療者が自ら市販のツールを利用して開発するユーザーメードシステムも数多く運用されている。それらを連携しながら、より現場が使いやすく高い運用成果を得るためにユーザーメードシステムの意義は高いが、アプリケーションの品質管理や運用持続性、あるいは病院情報システムとしてのガバナンスという点などで課題も多い。日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)が開催した第32回医療情報学連合大会(昨年11月15~17日、新潟市)での共同企画、第13回日本クリニカルパス学会学術集会(昨年12月7~8日、岡山市)で併催されたJ-SUMMITS全国集会で、そうした課題が議論された。

ユーザーメードシステムの費用対効果は?

 第32回医療情報学連合大会での共同企画では、「ユーザーメードシステムの費用対効果」をテーマに基幹システムとの連携する構築事例を紹介しつつ、その費用対効果を明らかにした。

 山陰労災病院の太田原顕氏は、基幹システム(電子カルテ)と連携するFileMakerによるサブシステムを構築・運用する実例を紹介。「データベース連携で、ESS(External SQL Data Source)というFileMaker側で標準化した方式を利用した。スキルが低いエンドユーザーでも既存データベースとの連携が可能で、費用対効果という点でもベンダー、ユーザー両者にメリットがあった。コマーシャルベースで普及したコストパフォーマンスの高いツールを上手く使うと、トータルのシステムコストを抑えることができる」と指摘した。

 名古屋記念病院の草深裕光氏は、電子カルテと連携するFileMakerで開発した透析管理システムを紹介。同システムを自ら開発・運用することに至った背景には、以下の4項目に対する懸念があったと述べた。

(1)電子カルテ化と同病院の所属するグループで、透析専門の新クリニックをオープンするのが同時であり、透析スタッフの負担が大きい
(2)市販の透析部門システムの導入コストは1000万円以上と見られ、投資負担が大きい
(3)グループ施設の透析装置との整合性が図れるのか
(4)既存のFileMakerで実現してきた機能が活かせるか

 草深氏は「ユーザー自身で開発・運用する透析管理システムは限定的施設での利用が前提で、個別ニーズへの対応が可能だった。また、導入・維持管理コストが小さく、機能追加も迅速・容易にできる」とメリットを述べた。

 国立病院機構 大阪医療センターの岡垣篤彦氏は、ベンダー製電子カルテをバックエンドシステムとして利用し、インターフェース層にFileMakerを利用して構築したカード型電子カルテを紹介。「“ユーザーメードシステムを組み込む仕組み”にコストがかかるが、システム全体の開発費から見ればわずか数%程度。現場の要求を満たせることで、医療の質向上につながるメリットがある」。一方、アプリケーションの継承性やセキュリティ機能の実装における課題に対しては、「医療情報学会のシンポジウムで提示された、エンドユーザーコンピューティング(EUC)におけるガイドラインを守ることが必要」と指摘した。

 都立広尾病院の山本康仁氏はEUCの課題として、(1)スプレッドシートのような類似したアプリケーションが乱立することによる管理コストの増大、(2)個人情報保護、セキュリティ機能、ソフトウエア品質が不十分な場合に新たな過誤が発生する恐れ、(3)維持管理における担当者の属人性が高いことによるアプリケーションの利用継続に対する懸念、といった点を指摘。特に最大の問題は、EUCで開発したアプリケーションの利用度で、いつまで管理継続するのかの判断が難しいと指摘、「医療プロセスマネージメントという考えに基づいて、分析・実行・モニタリング・改善のサイクルが回る可視化ツールの実装が重要」だと述べた。

 名古屋大学医学部附属病院の吉田茂氏は、深部静脈血栓症と肺塞栓症(DVT/PE)の予防のための評価システム開発プロジェクトを例に挙げながら、ユーザーメードシステムにおける開発手法、仕様書のあり方について述べた。「ベンダーにシステム開発を依頼する際に、医師がきちんとした要求仕様書を作成できれば、医療者とエンジニアの間に“通訳”は不要。医療現場の“暗黙知”から医療ITシステムを生み出せれば効率的だが、ベンダーが開発するために仕様書という“形式知”を間に挟む。形式知は理解しやすいが、暗黙知から多くを削ぎ落したもの。暗黙知をそのまま理解してシステム化するのが、ユーザーメードだと考える」と述べた。その際に重要な点の1つが、「開発プラットフォームの柔軟性であり、特別なプログラミング言語を用いることなく、あらかじめ用意されたモジュールなどで迅速に開発可能で、追加修正も容易に行えるツールであること」だと強調した。

ユーザーメードシステムに仕様書は必要か?

 J-SUMMITS全国集会では、さらに仕様書のあり方を議論するために「ユーザーメードシステムにおける仕様書の存在意義」をテーマに、ベンダー側の考え・意見を交えてパネルディスカッションが行われた。冒頭、J-SUMMITS幹事(EUC=End User Computing部門長)で、第13回日本クリニカルパス学会学術集会大会長を務めた川崎医科大学の若宮俊司氏が、エンドユーザーが作成するソフトウエア・ハードウエアに対するドキュメントとシステム管理のあり方、EUCのガバナンスについて述べた。

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