山陰労災病院の太田原顕氏
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名古屋記念病院の草深裕光氏
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国立病院機構 大阪医療センターの岡垣篤彦氏
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都立広尾病院の山本康仁氏
都立広尾病院の山本康仁氏
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名古屋大学医学部附属病院の吉田茂氏
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川崎医科大学の若宮俊司氏
川崎医科大学の若宮俊司氏
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J-SUMMITS全国集会でのディスカッションの様子
J-SUMMITS全国集会でのディスカッションの様子
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 続いて、各ベンダーの担当者がシステム開発における仕様書作成・管理の実際と、ユーザーメードシステムの開発における仕様書のあり方について意見を述べた。

 まず、富士通システムズ・ウエストの沼澤功太郎氏は、「ITベンダーにおける仕様書・開発標準の実際」と題して自社の例を紹介した。「富士通には、企画から開発、運用・保守に至る工程で、SDEM(Solution-oriented system Development Engineering Methodology)という品質保証活動の基本的な考え方を示した標準プロセス体系がある。各工程でインプットがあってスタートし、工程が終わるときには必ずドキュメントを成果物としてまとめる。その成果物に、要件定義書、インターフェース設計書、構造設計書、テスト仕様書などがある」と説明した。

 一方、ユーザーメードシステムについては、「開発者がユーザーなので、仕様書を書いて誰かに伝えるという意味では、必要性が低いかもしれない。しかし、開発者が他の病院に転勤になる、開発した本人すら修正した場合どこに影響するかを確認できない、ということはよくある」と述べ、成果物を生み出すような標準化された開発モデルが必要か否かは議論を要するものの、何らかのドキュメントは残す必要があろうと述べた。

 ジュッポーワークスの卯目俊太郎氏は、受託開発に際して仕様書を作成するかどうかはケースバイケースだとし、その背景には「単純にプロジェクトの大きさによる経営的な判断で、1週間程度で終わる開発で仕様書を作成していたら利益が出せない。長期で複数の人間が開発に参加する場合、仕様書は必須だと思う」と述べた。また、仕様書の形式に関しては社内標準のようなものはなく、ユーザーの要求に合わせた仕様書を作成するのが実状だという。

 ジェネコムの高岡幸生氏は、開発段階で成果物を作成することはユーザーメードでは難しいと指摘し、運用しながらドキュメントを作成することが重要とした。「当社はドキュメント作成のフォーマットを用意し、それをユーザーに提供するとともに言葉の定義などを伝えている。情報資産として資料を残すことは、現場にとっては非常に有益なこと。ベンダーが何らかのシステムを開発する際にも、そのドキュメントは非常に役立つ」と述べた。

 キー・プランニングの木下雄一朗氏は「情報共有ツールを活用した仕様書管理フレームワーク」と題して、受託開発における自社の仕様書、開発時の情報共有ツールの紹介、FileMakerをベースにした仕様管理について述べた。「当社は、見積のための仕様書と機能実装のための仕様書を作成する。情報共有ツールとして、テキストベースで記述でき、必要なものは添付ファイルで関連付けるソフトウエアWikiを利用している。変更の差分や履歴が自動的に残せることがメリットだ。また、機能の実装段階ではWebベースのプロジェクト管理ソフトウエアであるRedmineを使い、タスク管理、進捗管理、情報共有を行っている」。ユーザーがこうしたツールを使いこなすことが負担なら、コメントの記載やリレーションシップグラフ、データベースデザインレポートなど、FileMaker自体の機能を利用した仕様管理もできるのではないかと指摘した。

 大阪医療センターの岡垣篤彦氏は、FileMakerによる開発でどこまで仕様書管理が必要かという点に関して、「ユーザーメードで業務アプリケーションを作る場合は、業務内容も解決すべき問題点や方法も理解している。アイデアをすぐに形にするため、まず実装して稼動を確認するというプロセスを踏むことが多い。稼動してから仕様書作成をするので非常に苦痛になるが、品質管理や継承性を考えればドキュメント作成は必須と考える」と述べた。

 なお、J-SUMMITS全国集会ではこの他、都立広尾病院の山本康仁氏が昨年7月16日から3日間、米国フロリダ州マイアミで開催された「FileMaker Developer Conference 2012」に参加し、メディカルトラックでプレゼンしたことを報告した。また、J-SUMMITS代表の吉田茂氏が、1年間に実施したSites Visit(ユーザー病院見学会)や仙台や沖縄で開催したスペシャルセミナーなどの活動報告を行った。