電子カルテと双方向連携するFileMakerシステム

 新病院情報システム導入にあたっては、従来のFileMakerによる情報資産を移行・発展させると同時に、電子カルテシステムと密な連携実現にも取り組んだ。双方向連携を実現することを基本に、(1)電子カルテデータを可能な限りリアルタイムで共有しFileMakerによる二次利用を可能にする、(2)ユーザー(診療現場)の要望に対応し、適正なコストでアプリケーション開発を行う、の2つのテーマを掲げた。

 電子カルテからFileMakerへは、ログイン情報や患者基本情報、入退院情報、DPC情報などを、CSV形式や外部SQLデータソース(ESS)でデータ連携。電子カルテ情報は、Cube DBを構築してODBC接続で連携している。一方FileMakerで入力したオーダー情報、医事情報、カルテ情報、ToDo情報は、電子カルテ側へ書き込むこともできる。

電子カルテからFileMakerの起動は、各文書の起動ボタンをクリックする、あるいはポータル画面の診療科別・職種別・部門別メニューなどからファイルを起動できるなど、いくつかの方法が設定。素早く必要な文書やアプリに到達できるように工夫されている
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 草深氏は「FileMakerシステムの開発は、電子カルテ稼動半年前から職員を対象にFileMakerに関する研修を行い、各部門代表者に自分たちで使用するレイアウトを作成してもらいました」と開発経緯を述べる。システム部門側で、電子カルテ連携に必要なスクリプトや患者情報などの共通フィールドを組み込んだサンプルファイルを作成、部門ユーザーは、そのファイルに自分たちが使用するフィールドをレイアウトした。「ポータルファイルと汎用性の高いひな形サンプルファイルは、私と両備システムズで共同開発しました」(草深氏)。

 現在、運用しているFileMaker診療支援ソリューションは約90ファイル。従来のシステムから移行した入退院関連文書、リスク評価、NST、サマリーなど入院管理系ファイル、紹介状や同意書などの文書作成系をはじめ、栄養科や薬剤部、医療相談、透析、リハビリなど部門システム系のファイルがある。また、手書き文書をスキャンしてProRecordに電子保存する際に使用するQRスキャン機能なども新たに開発した。

 FileMaker診療支援ソリューションは、約530台あるすべての電子カルテ端末で利用できる。また、FileMakerは基本的に電子カルテをオープンした状態でしか起動しない。頻繁に使用する文書やレイアウトは、電子カルテ画面上に配置されたアイコンを1回クリックするだけで、電子カルテ選択中の患者情報等を自動設定して表示される。また、FileMakerポータル画面を起動すると、診療科別、種類別、職種別に分類されたメニューが表示され、希望するファイルやレイアウトへ移動することも可能である。

FileMaker診療支援ソリューションのポータル画面
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FileMakerで作成した入院初期計画書
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 今回、iPad(iOS)からWeb経由で直接FileMakerにアクセスできる仕組みも実装した。職員のログインに必要な情報を外部ファイル上に置くとセキュリティ上のリスクがあるため、電子カルテのユーザー認証機構を利用している点が特徴だ。具体的には、iPad上のブラウザ(Safari)でFileMakerのログイン画面を起動し、電子カルテのユーザーID/パスワードを入力。電子カルテがもつ認証機構で承認されて初めて、FileMaker Goが立ち上がりFileMakerシステムへのアクセスが可能となる。

 なお、新規導入したPSP社のPACS(EV insite)は、iPadから希望の画像を自由に選択して高速表示できる「Insite Pad」アプリを1月の稼働に合わせて新規に開発。iPadを用いた画像参照が、ベッドサイドをはじめ、あらゆる場所で可能となった。