「合掌苑(がっしょうえん)」「鶴の苑(つるのさと)」「輝の杜(かがやきのもり)」という3つの施設を拠点に、24時間体制のサービスで利用者をサポートする社会福祉法人 合掌苑。パソコンの導入さえ進まない介護施設が多いなかで、すでに無線LANソリューションを導入している先進的な施設である。今回は3つの施設の中から、東京都町田市鶴間にある「鶴の苑」を取材した。


 養護老人ホームや高齢者アパートから、訪問介護や居宅介護支援、デイサービス、訪問入浴サービスなどの在宅サービスまで、さまざまな介護サービスを提供する社会福祉法人 合掌苑。今回訪れた鶴の苑は、介護と医療を連携させ、要介護者向けにサービスを提供する施設だ。地上7階・地下1階の建物は、介護・医療を必要とする利用者向けの「アシステッドナーシング」と呼ばれるフロア、認知症を持つ利用者向けの「スペシャルケアセンター」と呼ばれるフロア、シニア向け賃貸マンションのフロアなどで構成される。アシステッドナーシングのフロアの場合、1フロアのスタッフ数は最大8人(ナースを含む)で、部屋数は29(すべて個室)。入居金は798万円、月額利用料は約25万円からとなっている。

理事長の森一成氏
理事長の森一成氏

 「どれだけ手をかけ、声をかけられるか。それが利用者の満足につながります」。社会福祉法人合掌苑の理事長である森一成氏はこう語る。その言葉通り、施設内ではきめ細やかで手厚いサービスが提供されている。スタッフの対応も徹底しており、外来の訪問者に対して率先的に挨拶するなど明るい印象を受ける。さらに、利用者への刺激を和らげる間接照明や、ホテルを思わせる看板やエントランスのデザインなども採用。専用のレストランや、昭和30~40年代を思い出させるノスタルジックな看板を飾った庭園に加え、女性利用者がビューティケアを受けられる専用の美容室を完備するなど、多様な設備をそろえている。介護施設というよりも、どこかリゾートのような安らぎのある雰囲気づくりが印象的だ。

 利用者の満足向上のためにさまざまなアイデアを実現している合掌苑にとって、スタッフの業務効率化を目的とした無線LANソリューションの導入も「利用者の満足につながる」ためのサービスの一環といえる。合掌苑では、より質の高い介護を目指してITを積極的に導入している。その一環として、2012年3月に無線LANソリューションを3つの施設すべてに導入した。ソリューションの導入は日本総研情報サービスが担当した。

無線LANのアクセスポイント
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 安全性や入居者への配慮などから、AP(アクセスポイント)は基本的に天井裏など目のつかない場所に設置した。APの総数は、3施設合計で約40台。現在はスタッフが仕事用のノートパソコン経由で利用しているが、今後はタブレット端末による介護記録システムでの利用も視野に入れている。

 合掌苑が有線LANとメールを導入したのは1993年。森氏の前職がプログラマーだったということもあり、業界としてはかなり早い段階でIT化に着手した。その後、介護スタッフの多くがメールを利用するようになったが、数台しかない共用パソコンだけでは、全員が効率よくメールチェックできないという問題が浮上した。しかし、LANケーブルを敷設する手間やスペースの問題から、簡単には台数を増やせない状況にあった。そこで、2009年にメールをすべてGmailに変更し、自宅や外部からでも社内メールが確認できる仕組みに切り替えた。