介護記録システム以外にも、タブレット端末と無線LANソリューションの活用法として、Skypeなどのビデオ通話を利用したインターネット会議や、動画の情報共有が候補に挙がっている。合掌苑では、Gmailによるテキストベースの情報共有はすでに行っているが、「傷の具合いなどを説明する時に、カメラで撮影して映像を送れるので非常に便利。容量が無制限ならば、動画を撮影して共有したいくらい」と森氏は前向きだ。市原氏も「夜中にお客様が転倒して傷ができた場合、今までは電話で状況を説明していたので、傷が大きいのか小さいのか、深いか浅いのかを十分に伝えられない部分もありました。しかし、動画を撮って看護師に送れば、救急車を呼ぶ必要があるかどうか判断するなど、対処が迅速に行えるはずです」と利便性の高さに期待している。

懐かしいレトロな雰囲気をかもし出している
[画像のクリックで拡大表示]

 さらには、ネットワークカメラを部屋に設置して、内部の様子をタブレット端末で見るというアイデアもある。「夜勤中などで、部屋の様子を確認するのに活用できるかなと考えています。もちろん、ご家族から“安全確保のために”という理由で承諾をいただく必要はありますが。逆にご家族がお客様の様子を確認するために閲覧するというのも、ひとつのサービスとして考えています」と森氏は話す。

 今回の無線LANソリューションの導入には、ノートパソコンの買い替え費用なども含め、合計で1000万円以上の費用がかかっているという。管理職に年配者が多い介護業界で、無線LAN導入にここまで投資している施設は少ない。しかし、森氏はもともとプログラマーだったこともありITについての造詣が深く、合掌苑がIT化を推進する大きな原動力になっている。

施設内にある美容室
[画像のクリックで拡大表示]

 現段階では、タブレット端末を利用した介護記録システムはまだデモ段階だが、年内をメドとした早期導入を目指している。森氏は、「IT化をしないで効率化を図ると、お客様に対してかける手間を省くことになってしまいます。それではいい方向には進まないでしょう。非効率な作業が多い現状を、IT化を進めて少しでも効率的にしたいと考えています」と説明する。重ねて「ITでスタッフの連携を効率化することが非常に重要。介護業界が連携の重要性に気付くためのひとつの成功事例になれれば」と抱負を語った。


■事業者概要
名称:社会福祉法人 合掌苑
所在地:東京都町田市鶴間684-1
設立:1953年
理事長:森 一成氏
事業内容(グループ):養護老人ホーム、高齢者アパート、訪問看護サービス、訪問介護サービス、居宅介護支援サービス、グループホーム、デイサービス、訪問入浴サービス、健康食事サービス、訪問介護員養成研修ほか
Webサイト:http://www.gsen.or.jp/index.html
導入システム・機器:無線コントローラ メルー・ネットワークス「MC1500」、無線アクセスポイント メルー・ネットワークス「AP1010i」、認証サーバー ソリトンシステムズ「NetAttest EPS-SX03」、介護記録システム ティアックシステムクリエイト「コメットケア」など