iPadによる情報アクセスで機動性を向上

 院内システム整備に関するもう1つのトピックが、iPadやiPhoneでの利用環境を構築したことだ。「当院の入院施設は急性期病床なので、患者さんのほとんどが2週間程度で入れ替わります。48床ながら限られた専門医で治療にあたるため、入院患者の経過状況を頭で把握するのは難しく、いつでも、どこからでも患者情報にアクセスし参照できる環境が必要だったのです」(髙萩氏)。また、院外でもVPN接続で患者情報にアクセスできるのに加え、メールなどのコミュニケーション機能を利用できることも、環境を構築した理由の1つ。「緊急で対応しなければならないときなど、出先から情報を参照してメールで指示できるので非常に便利。またFaceTimeを介して動画で病状を確認できるので院外にいてもディスカッションが可能です。」(髙萩氏)。

iPadの導入で「データベースを持ち歩ける」ようになったという
iPadの導入で「データベースを持ち歩ける」ようになったという

 FileMaker Goを利用して、直接FileMakerのデータにアクセスできる。PACSの画像に関しては、DICOM画像参照可能な画像処理ソフトである「OsiriX」をiPadにインストールし、画像データをダウンロードして閲覧している。「病棟回診時やカンファレンスの際に、FileMakerの患者情報や画像を手軽に参照できます。また、iPadにダウンロードした画像は、術中の参照用としても活用しています」(髙萩氏)。ただし、OsiriXによる画像データダウンロードには時間がかかるため、今後はWebブラウザでアクセス可能な環境にしたいという。今後は、バイタル情報などを入力する病棟業務支援システムでも、モバイル化を計画している。

 当初は髙萩氏が1人でFileMakerによるアプリケーション開発・メンテナンスを担ってきたが、現在では医療クラーク、総務、給食担当のスタッフなど5人が担当している。「給食部門の職員も、独学でFileMakerを使って給食管理ツールを作成しました。自分たちの使いたいツール、業務が楽になるツールを手軽に自ら開発でき、より使いやすく改善することができるのが、ユーザーメードの最大の利点です」と、髙萩氏は医療者自らがツールを作ることのメリットを述べた。


■病院概要
名称:石井脳神経外科・眼科病院
住所:福島県いわき市小名浜林城字塚前3-1
診療科:脳神経外科、眼科、内科、リハビリテーション科
脳ドック
病床数:48床
関連施設:介護老人保健施設「いきがい村」、「天然温泉いきがい村デイケアセンター テルメ照島」、石井医院
Webサイト:http://www.ishiihp.or.jp/ishiinouge/
導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Server」「FileMaker Pro」「FileMaker Go」、アルファシステム「ORCA連動FileMaker DB」ソリューション他