北海道北見医師会や北見市社会福祉協議会などが中心となって設立した北見市医療福祉情報連携協議会は、市内の医療機関、介護施設、地域包括支援センター、行政がそれぞれ持つ患者情報を共有・連携するICT基盤「北まるnet」を構築。9月から実証事件を開始した。プラットフォームの中核にFileMakerを採用している全国的にも珍しい地域医療・介護情報連携ネットワークである。


 人口12万5000人の北見市はオホーツク圏最大の都市。東西110キロに及ぶ広さで、中核病院をはじめとする医療機関は北見自治区に偏在している。医師不足のうえに高齢化率も26.4%と高く、限られた医療資源を有効に活用した体制づくりが急務となっている。また、救急医療や慢性疾患患者が増大する中で、受け入れ施設の不足、在宅生活支援に伴う関係機関の連携不足などが、これまでも関係者から叫ばれてきたという。

古屋聖兒 氏
北見医師会会長・北見市医療福祉情報連携協議会会長の古屋聖兒氏

 こうした課題の解決に向け、「従来縦割りであった保健、医療、福祉の横のつながりを強め、北見市民が安心して暮らせる共生社会の再構築が必要不可欠。それを支援するために、さまざまな医療や介護の情報を厳格な管理下で、医療・介護にかかわる多職種による相互に有効活用できるシステム連携基盤が必要でした」。北見医師会会長 古屋聖兒氏(古屋病院長)は、北見市医療福祉情報連携協議会の発足と北まるnet構築の経緯をこう語る。

医療情報共有と介護福祉分野の共有情報の利活用を当初目標に

 連携協議会は2011年7月に発足した。ICTの活用をベースに、「北見市の医療介護資源の最大活用」「医療介護における地域包括ケア体制の構築」「市民自身による主体的な健康増進への喚起」を使命に掲げている。会長は北見医師会会長の古屋氏が務め、市内の基幹病院を含む医療機関、介護保険事業所、北見工業大学(保健管理センター他)、北見消防署など17団体45人で構成されている。

 事業目標には、健康医療情報共有のための情報基盤の構築、その上での地域連携クリニカルパスの運用、健診データ管理、脳卒中・糖尿病・CKD(慢性腎臓病)・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性疾患における診療連携のためのデータ管理、介護福祉分野での共有情報の利活用、救急医療における共有情報の利活用、お薬手帳・処方せんの電子化、薬局での服薬指導に関する共有情報の利活用、などを挙げている。

 特に、地域医療連携推進のためのシステム基盤構築に加え、当初から介護分野での情報共有、医療機関との情報連携の仕組みを確立することを重視した。その背景には、退院時に病院の医療ソーシャルワーカーからケアマネジャーへの情報提供するケースは約4割で、半数以上の患者の情報が伝えられないまま介護に移行する現状があったという。「昨今、医療と介護の連携がいわれているものの、情報共有を含め連携不十分の実態があります。そこに問題意識を強く抱いた北見医師会メンバーがおり、医師会としても積極的に支援していこうという気運が生まれました」(古屋氏)と述べる。

 こうした経緯を踏まえて、連携協議会では初年度の事業として、健康医療情報共有のための情報基盤の構築と利活用、介護福祉分野などの共有情報の利活用の仕組みを先行させた。具体的には、(1)医療・介護情報連携のためのネットワークシステムの構築、(2)介護情報共有システム(主治医意見書、介護認定調査票の電子化)構築、(3)介護認定審査会のペーパーレス化とWeb会議化、(4)要介護者・要援護者・社会資源データベースとマップ構築に着手した。システム面では、医療・介護情報連携データベース、要介護者・要援護者マップ/社会資源データベース、介護認定連携システムという構成である。