医療・介護・社会福祉の3機関で活用する3つのシステム

 北まるnetの中核的なシステム基盤である医療・介護情報連携データベースは、診療情報と付帯情報の共有・連携を担う。診療情報は、病名、処方・注射、検体・画像検査、患者サマリー、診療情報提供書、リハビリ、食事情報などが含まれる。一方、付帯情報は、看護、介護、認知、嚥下などの病棟や生活における情報、基礎ADLや自立度などの日常機能活動情報、家庭環境や社会参加に関する情報、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーによる介入情報、掲示板による関連施設とのコミュニケーション機能などがある。

図1 「北まるnet」の概要
北まるnetの全体像。DASCHシステムを採用した医療・介護情報連携データベースをはじめ、ほぼすべてのシステムがFileMakerをプラットフォームとしている。
出典:北見市医療福祉情報連携協議会
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 当システムの構築にあたっては、北海道の医療関係者で構成される北海道広域医療連携研究会がFileMakerをベースに開発したDASCH(Databank of Seamless Care in Hokkaido)システムを採用した。北まるnetのシステム構築専門部会長 田頭剛弦氏(北星脳神経・心血管内科病院 医療情報管理室室長)は、同システムを採用した経緯をこう振り返る。

田頭剛弦 氏
北星脳神経・心血管内科病院医療情報管理室室長の田頭剛弦氏

 「限られた構築資金で、かつセキュリティ機能を担保したシステムを短期間で構築する必要があったことから、北海道地域連携クリティカルパス運営協議会で運用実績のあったDASCHシステムを候補に検討しました。医療情報の共有だけでなく、患者さんの生活や身体機能などの付帯情報も共有でき、掲示板機能も併せて医療と介護の橋渡しとなるケアマネジャーをはじめとする介護関係者とのコミュニケーション環境を整備できることを高く評価しました。また、FileMaker上で動作しているので、事業を展開していく際に拡張性のあるところも魅力でした」。

 介護認定連携システムは、要介護度を決定する審査会を効率的に進めることを目的に構築された。これまでは、主治医意見書やケアマネジャーによる認定調査票の市介護福祉課への提出、介護認定審査会事務局が審査会メンバーへの同資料の配付など、すべて紙ベースで行ってきている。「協議会が実施したアンケート調査では、病院で50%、診療所で15%が主治医意見書をシステム化していました。しかし、介護認定の調査票のシステム化はごくわずかで、すべて紙に出力して提出しています。北見市の場合、6合議体30人の審査会メンバーにそれら資料を製本して送付する作業は、大変な負荷だと聞きました」(田頭氏)。

図2 介護情報共有システム・介護認定審査会システム
主治医意見書、認定調査票をデータベース化し、認定審査会でのペーパーレス会議、さらにはWeb会議を導入して効率化を図っていく。
出典:北見市医療福祉情報連携協議会
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 そこで介護認定連携システムの第1フェーズとして、主治医意見書、認定調査票の入力システムおよびデータベースを構築(ペーパレス化)。審査会メンバーは事前にPDF出力された両資料をダウンロードして検証するとともに、審査会議当日はiPadなどで参照しながら審査する形態に移行した。資料提出・配布に関する作業負荷と郵送コストは軽減され、審査会議においても審査会メンバーの1グループで検証したところ、紙ベースの審査とほぼ同じ時間で終了できたという。

 また、介護認定連携システムの第2フェーズではWeb会議システムの導入を計画している。介護認定審査会は、地区によっては旧町村が合併しているため参集に時間がかかり、冬場は雪のために出席できない審査員も出るという。そのため、審査員がそれぞれの職場にいながら、Web会議で認定審査に臨めるよう環境整備する。現在は準備中で、年内に実施する計画だ。

 一方、要介護者・要援護者マップ/社会資源データベースは、在宅患者・要介護者などの詳細な所在情報、医療・介護情報、周辺の医療機関・介護事業所などの社会資源をデータベース化して、レイヤー(情報)ごとに地図上にマッピングするシステム。公衆衛生的な分析情報マッピングや、救急隊での利用を考えているという。「北見市がGPSを利用した市内の詳細な除雪マップを作っており、そのGIS基盤を利用して低コストでの開発が実現しました」(田頭氏)という。