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医療現場の要求、運用に合わせた柔軟なシステム構築を可能にするユーザーメードシステム

社会医療法人孝仁会、松尾内科病院、製鉄記念広畑病院、ゆうあいホスピタル

2013/01/15 00:00
増田 克善=医療ITライター

 医療機関ごと、あるいは診療科によって要求が異なる医療現場で、パッケージ化されたベンダー製医療ITシステムでは汎用固定化されたインターフェースや仕様に満足できないという声も多い。それらベンダー製品を補完するシステムとして、医療従事者自らが市販のアプリケーションソフトウエアを駆使して、医療現場の業務に関する知識や経験を活かして医療ITシステムを構築する「ユーザーメード医療IT」が注目されている。

 ユーザーメードのシステムとベンダー製システムとの連携・融合を図ることで、理想的な医療情報システムを実現しようとする試みだ。この記事では、そうした医療機関の事例を4つ紹介する。


ケース1:社会医療法人孝仁会(北海道釧路市)
オーダリング・電子カルテを独自開発、電子クリニカルパスも運用

孝仁会法人本部の情報管理部部長、釧路港仁会記念病院情報室室長を務める森本守氏
孝仁会法人本部の情報管理部部長、釧路港仁会記念病院情報室室長を務める森本守氏

 北海道釧路市を拠点に医療・介護事業を展開する社会医療法人 孝仁会(理事長:齋藤孝次氏)は、釧路孝仁会記念病院、星が浦病院など3病院、6診療所(有床3施設)と介護関係27施設を運営する。1989年に釧路脳神経外科開設と同時に、放射線科関係書類の電子化に着手したのを皮切りに、オーダリング、電子カルテまですべてFileMakerで開発・構築した医療情報システムを運用している。

 医療情報システム開発の中心的存在が、診療放射線技師で現在は法人本部の情報管理部部長、釧路港仁会記念病院情報室室長を務める森本守氏だ。1996年に開設した星が浦病院に転属になったのを機に、FileMakerをプラットフォームとして本格的な病院情報システムの構築に着手した。各診察室、病棟各フロアにMac端末が配置されるようになり、まず放射線科のオーダリングシステムを開発。同時にドクターから依頼を受けて、各ドクター別の診療メモデータベースを作成する。翌年には、各科でオーダリングを稼動させ、各科診療データベースの構築を完成した。

 「完全フィルムレス診療を開始したのは世界初と話題になり、業務に支障が出るほど各国各地から視察に訪れました」と森本氏は当時を振り返る。1998年には釧路脳神経外科病院に戻り、星が浦病院と同じオーダリングシステムの構築に着手。翌年には看護支援系システムを除いて、すべての部門システムで現在のデータベースの原型が完成した。ただし、医事コンピュータとの連携ができていなかった。

 「当時、法人内で導入実績のある医事コンピュータの大手ベンダーに連携を相談したところ、自作のオーダリングシステムと連携するのはムリと拒否されました。そこで、全国のベンダーにリサーチをかけ、FileMakerと連携可能な製品を探しました。数社から応募があり、マックスシステムの医事会計システムにリプレースしました」(森本氏)。こうして2002年秋には、オーダリングシステムと医事コンピュータの連携が実現した。なお、診療所では日医標準レセコンのORCAを導入し、FileMakerと連携させている。

 森本氏は、2000年頃からいずれ電子カルテが主流になると考え、多くのベンダーを視察したが、当時は満足できるシステムがなかったという。それまで構築してきたシステム資産を活かすという効果も考慮して、電子カルテシステムも自前で開発することを決意する。

 「2003年に、厚生労働省の地域医療機関連携のための電子カルテ導入補助事業に、FileMakerでシステムを提案して採用されました。それを機に開発に取り組み、現在のシステムに至っています」(森本氏)。情報の真正性担保のために1分間隔でシステムの全書類をPDF化して保存するなど、いわゆる電子カルテの三原則(真正性、見読性、保存性)を満たしたシステムを完成させた。

釧路孝仁会記念病院の病院情報システムポータル画面。ほとんどの業務ツールがボタンで起動する
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クリニカルパスのオーバービュー画面。日付ごとにアウトカム(タスク、ケア)、処置、注射などを表示。バリアンスボタンを押すとバリアンス入力の画面が表示され、バリアンスの発生日などを入力する
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 一方、クリニカルパスについては、脳神経外科で未破裂動脈瘤クリッピング、慢性硬膜下血腫のパスをExcelで運用していた。クリニカルパス委員会からのExcelに書かれたオーダー、看護記録をすべて自動生成して欲しいという要求に応じる形で、FileMakerのオーダリングと連携するシステムを開発している。ヒューマンエラーを極力なくすことを目指して、入力はシンプル、操作は一度で済むこと、パスの始動は患者さんの前で、終了は退院時とし、集計の自動化を実現するシステムを構築しました」(森本氏)。

 開発した電子クリニカルパスは、入院日を起算としたスケジュール管理ができ、入院時・術中・術後検査オーダー、食事せん、注射・点滴指示せん、術後介助入浴、術後リハビリ指示せん、退院前インフォームドコンセント予約、退院後外来予約などが可能。また、パス実行中に簡単な看護記録が日別に入力ができ、バリアンスなどの統計処理も自動化されている。

外来予約から各種検査予約、手術予約、入浴やインフォームドコンセントの予約も1つの予約画面に収録されている。例えば、手術予約ボタンで手術スケジュールが表示され、手術予約では患者IDを入力、どのような手術を行うのかメニューから選択、麻酔方法や手術体位など必要な項目はチェックするだけで予約が完了する
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 病院情報システムの特徴は、各種機能のレイアウトとデータのファイルを完全に分離して、起動時のポータル画面はほとんどのツールのボタン集とリレーションするフィールドになっている。また、医師は通常3面のマルチモニター(医師によっては6面マルチモニター)を使っているが、各自がどのモニターに何の画面を表示させるかニーズが異なるため、「位置初期化」「位置記憶」というボタンを設け、各自が使いやすく慣れたカルテ画面の配置ができるよう工夫されている。

 2013年1月には、最後の電子化となる看護支援システムが本稼動する予定だ。一連のシステムをFileMakerで構築しようとした動機を森本氏は、「現場から、常にシステムの改善要求があります。それに迅速に応えられる仕組み、体制でなければなりません。ユーザーメードだから実現可能なことは多いと思います」と強調した。

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